私たちが求めるのは「優しい破滅」? 行方不明展を解剖する。【大森時生×梨×オダウエダ植田】

(左から)大森時生、植田紫帆(オダウエダ)、梨


──考察や謎解き要素もあるのですか?

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大森:4つのゾーンをすべてみると、うっすらとつながりやストーリーが見えてくるかもしれません。考察しようと思えばいくらでもできるけれど、「考察してください」という建付けでつくっているわけでもないんです。

梨:見終わった人は、「あ、意外とわかりやすいかも」ってなるかもしれないなって思っています。

植田:難易度、気になってました。
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大森:謎を解かないとつながらないとか、面白さがわからないということはないと思っています。展示そのもので楽しめますね。

──怖いですか?

大森:本当に「怖くない」って思いますけどね、今回は。

梨:うん、いわゆるホラーでは、たぶんない気がするので。

植田:恐怖にもいろいろあるとは思うんですけど、たぶんみなさんが事前に思われている「怖いんですか?」というのは、びっくり!的な要素だと思うんです。そういったことは決してないということですよね。

梨:そうですね。

「あいまい」の神秘性が美しい?

──「行方不明展」に行く前に予習するとしたらどんなコンテンツでしょう?

大森:やっぱりさっき話題に出た「きさらぎ駅」とかかな……?

:あとは「時空のおっさん」「ゲラゲラ医者」「地下のまる穴」とか?

大森:ホラーではないですが村上春樹さんの小説も、行方不明モノが多いですよね。『ねじまき鳥クロニクル』も『スプートニクの恋人』も。

「ねじまき鳥〜」は飼い猫の失踪を機に日常が狂い始めた主人公の話ですが、いつのまにか主人公が1人になっていて。そこにうっすらとした不気味さとか怖さがあるんですよね。どちらが行方不明になったかわからないという反転も起こっているし。


植田:もしかしたら「行方不明展」を観ている方は、その主人公と同じような怖さを味わうかもしれないですね。自分だけがこのヒトたちやモノの所在を知らないだけで、本当はみんな知っていたり、どこかにあったりして……。そういう、世界から切り離されたような経験ができそうです。

私も、ゲームをやっていてそういう感覚になることがあって。さっきの「8番出口」もそうですし。ゲーム内の空間をひとりでさまよっているときに、それが怖いと思う時と、キレイだなと思う時があるんですよね。

“美しさ”というのも、そこにあるかな。「そうなりたい」という感覚がそう思わせているのかもしれないですけど。ヒトやモノがなくなるとか、場所があいまいになるとか、「あいまい」に神秘性があるからこそなのかもしれないですね。


おおもり・ときお◎1995年生まれ、東京都出身。2019年にテレビ東京へ入社。「Aマッソのがんばれ奥様ッソ!」「Raiken Nippon Hair」「このテープもってないですか?」「SIX HACK」「祓除」「イシナガキクエを探しています」などを担当。2023年にForbes JAPAN 30 UNDER 30に選出。

うえだ・しほ◎1991年生まれ、大阪府出身。2014年、小田結希とともにお笑いコンビ「オダウエダ」を結成し、2021年に「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝。現在は「天才てれびくん」(NHK Eテレ)などにレギュラー出演する。映画やマンガ、ゲームなどを趣味とし、元2ちゃんねらー(現5ちゃんねらー)でもある。

なし◎インターネットを中心に活動するホラー作家。日常に潜む怪異などを取り入れた作風を特徴とする。主な作品に、『かわいそ笑』(イースト・プレス)、『6』(玄光社)、『自由慄』(太田出版)など。8月に新刊『お前の死因にとびきりの恐怖を』(イースト・プレス)が刊行予定。


〈 「行方不明展」開催概要 〉
場所:三越前福島ビル
開催期間:7月19日(金)〜9月1日(日)
住所:東京都 中央区 日本橋 室町1-5-3 三越前 福島ビル 1F
開催時間:11時〜20時 ※最終入場は閉館30分前、観覧の所要時間は約90分
料金:2200円(税込)
主催:株式会社闇・株式会社テレビ東京・株式会社ローソンエンタテインメント

文=田中友梨 撮影=山田大輔

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