私たちが求めるのは「優しい破滅」? 行方不明展を解剖する。【大森時生×梨×オダウエダ植田】

(左から)大森時生、植田紫帆(オダウエダ)、梨


植田:
わかります。“クズ芸人”と呼ばれる人たちでしか救えないような人を救っているところがありますよね。それは、私がホラーを観るときの感覚にも通じていて。
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ハッピーエンドじゃ救われない気がするんです。とんでもないバッドエンドを見ないといけない時がある。ホラーが苦手な人に「なんでホラーを見るの?」と聞かれたときに、「ホラーを見てたら暗い気持ちになるやん」と言われることが多いんですが、「ハッピーエンドの話を見ても、暗い気持ちにならへん?」って思うんですよね。なんかめちゃめちゃみんな笑って、幸せそうで。観ていたこっちは、すごい置いて行かれた気持ちになって……。

大森:僕もホラーを観たあとは、救われるというより“フラットになる”っていう感覚があるかもしれないですね。

植田:あー、フラット! わかります。

大森と梨が考える「行方不明」の意味

──「行方不明展」は何が展示されるのですか?
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大森:あくまでもフィクションとしてモノや記憶などの「行方不明」を展示します。

梨:今回、1階と地下1階の2フロアをつかっていて、展示の動線は4つに分かれています。美術館の美術展でも、年代別や画家別にゾーンが分かれていたりすると思いますが、そんな感じです。

その分け方は「何が不明であるか」で決めました。最初はヒトの行方不明で「身元不明」ゾーン。次が場所の行方不明で「所在不明」ゾーン。3つ目がモノの行方不明で「出所不明」ゾーン。最後が記憶の行方不明で「真偽不明」ゾーンです。

──ヒトやモノの行方不明は耳馴染みがありますが、場所の行方不明とは?

:例えば「きさらぎ駅」(かつて2ちゃんねるに投稿された怪奇体験談に登場する架空の鉄道駅)的なものと同じような感じで、そこの場所がどこであるかがわからない、といった概念です。「Backrooms」(現実世界に起こるバグによって、ふとした瞬間にユーザーが異世界であるBackRoomsに飛ばされるという都市伝説)もそうですよね。

植田:今すごい流行っていますよね。

梨:例えばBackRoomsに人が迷いこんだとしたら、それはたぶんヒトの行方不明と場所の行方不明の合わせ技みたいな感じです。

──展示内容としてすでに発表されている、この柱は何の行方不明に関係があるんですか?
 

梨:この柱みたいな場所を見たことありますか?

植田:えー?! これ、見たことあるかな……。見たことあるけど、なんか…

梨:
それが具体的にどこにあるのかはわからない。

──ああ!

梨:リミナルスペース(簡素で不気味、超現実的な空間を指すインターネット・ミーム)ですね。

大森:人気ゲームの「8番出口」とかもそうですよね。

梨:こんなふうに、「行方不明」は、みんなが見たことがあるようなないようなもの、デジャヴや既視感みたいなものとも紐づくのかもしれないです。つまり、「行方不明」がフォーカスするものが、すごく広いわけですよ。

植田:それを実際に現場で体験できるってことですよね。いろいろ想像して楽しみになってきました。

──ひとつだけ完成している展示物がここにあるそうです!


植田:わー嬉しい。先行公開!!
 

箱の中にある展示物を見る植田

植田:いやーこれ怖いですわ。え? これって、本物……じゃないですよね? 見てるだけでも鳥肌が……

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文=田中友梨 撮影=山田大輔

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