意外なことだが、ドバイ政府観光商業マーケティング局によると、「中国、台湾、インドなどは、世界からヒトとカネが集まるドバイを舞台に国をあげて展示会を開催しています。しかし、日本は単独で展示会をやったことがない。ガルフード(食品総合見本市)やGITEX(スタートアップ見本市)に日本ブースは出ますが、展示会の一部なので、そう目立っているわけではないのです」。そう言われたマイコエンタープライズのCEO坂上舞は、京都府とともに2024年1月、「KYOTO,JAPAN in DUBAI」を開催した。ドバイ政府公認の初の「日本・京都展示会」に日本から95社が参加。昨年11月に参加企業を急募した企画だったが、準備期間がほとんどないなか、大盛況となり、多数の海外メディアが報道した。
坂上が振り返る。
「京都らしい伝統工芸からゲーム、環境技術、ライフサイエンスまで幅広い領域の企業さんが参加しました。特に現地で関心を集めていた分野のひとつがフードテックです。食糧の自給自足が課題である同地において、日本の発酵技術を使った京都の畜産飼料添加剤メーカーにはすぐにパートナーシップの話がきました。また、大型資金調達に向けて交渉に入ったICT企業もあります」
主催した京都府ものづくり振興課も想定外の大成功と言い、ドバイ側から「どうして日本市場にとどまるのか。世界に展開すべきだ」と指摘されたという。
世界の「ハブ都市」を目指してきたドバイが積極的に国際展示会を行う意味について、ユーラシアグループの同地域担当責任者エイハム・カメルはこう説明する。
「ドバイにとって、ここ10年ほどの間に開催してきたイベントは国際的な関心を集めるとともに、世界的に重要な課題について議論する場としての地歩を固めることにつながってきました。2020-21年のドバイ国際博覧会、2023年のCOP28、2013年から続くWorld Governments Summitなどの国際会議は、各国のリーダーが一堂に会し、気候変動という世界にとって最も重要な問題について議論し、UAE政府が国際的に大きな影響力をもちうること、ドバイには大規模イベントを計画・開催する力があることを世界に示したのです。
ドバイ政府はUAEとともにそのリーダーシップのもとで、世界的なソフトパワーをもちうる国としての立場を強化する戦略を推進しています。また、隣国サウジアラビアの対外的な解放と変革も、地域経済にメリットをもたらすWIN-WINの状況を生み出すと考えています」