NTTドコモが「アリーナ」戦略に乗り出す理由 日本発スポーツxエンタメを開拓

──北海道日本ハム・ファイターズが本拠地とするエスコンフィールドのような方向性を想定していらっしゃいますか。

まさにエスコンフィールドと同様グローバルレベルのアリーナをつくっていきたいと考えています。アリーナはその存在そのものが商品です。ネーミングライツは、企業のプロモーション、認知度アップだけでなく、その企業課題の解決に貢献することだと考えています。

IGアリーナで実現したいこと

IGアリーナ イメージ図(提供画像)

IGアリーナ イメージ図(提供画像)


──ロンドンを拠点とする金融サービス会社IGグループによる2035年までのネーミングライツのことですね。

IG証券は、50年の歴史を持つオンライン金融サービスのリーディングカンパニーです。日本で初めてノックアウトオプションという取引を導入した証券会社であり、17000種以上の銘柄を揃え、資産形成をサポートするサービスを提供しております。グローバルでは非常に認知度が高い企業ですが日本ではなかなか認知が上がらないなどの課題を持たれていました。

ネーミング・ライツはアリーナに名を冠するのみならず、アリーナを起点とした様々なアクティベーションを可能にすることからこの度の契約に至りました。ドコモが関わることで、来場者向けにイベントを企画し、共にプロモーションを一緒に立ち上げるなどもできます。ドコモの約1億人の会員基盤により、すでにプロ野球、Jリーグ、ラグビーのリーグワンなどと組み、これまで来場されなかったファンをどう呼び込むかを、データマーケティングにより支援してきた実績も良い例ではないでしょうか。

──ドコモとして具体的には、IGアリーナをどのように仕上げて行く方針でしょうか。

アリーナは30年、35年と長期間を運営していくビジネスです。改修なども含めその期間、その時代に合った新しいサービスを提供していくことが非常に重要と考えています。ICTの充実はもちろんのこと、ホスピタリティの充実や演出など、トータルで満足度が高いユーザー体験価値を提供していきたいと考えております。

特に通信環境については、日本で最高のスペックを目指しております。ひょっとすると現時点では世界初かもしれません。

IGアリーナにはAEG(世界最大のアリーナ運営会社かつ音楽エンターテインメント企業・アンシュッツ・エンターテインメント・グループ)も参画しており世界最高のコンテンツを持ち込みたいと計画しています。その際、SNSなどで動画をその場でアップできることが、グローバル・スタンダードのアリーナでは求められます。通信環境が悪いとせっかく映像を撮っても拡散できないという状況はお客様の体験価値を下げたり、アリーナの露出機会の損失に繋がりますので、避けなければいけません。

また今回はこだわってアプリを制作しています。来場者が「アプリを利用しないといけない」ではなく、自ら利用したくなるアプリを設計しています。利便性の高いチケット購入、モバイルオーダーを利用しての飲食購入、又、行動データに基づいたアプリからのレコメンドにより、来場者が自分に合った体験を選択しやすい環境を提供したり、行列なく快適に過ごせるようにして参ります。さらにアリーナを起点としたお客様の行動データを蓄積・分析してアリーナの運営や街づくりのマーケティングに活用するなど、ドコモの強みが出せるアプリを設計致しております。

──NTTグループとしてアメリカのフォーミュラレースの聖地インディ500などではスマートサーキットを具現化していますが、こうしたICTはスマートシティにも展開されて行くのでしょうか。

まずはIGアリーナ起点ですが、このアプリを持って街へ出ることで、さらなる賑わい創出に繋がっていき、ゆくゆくはスマートシティ具現化の鍵となるよう考えていきたいと思います。IGアリーナでの社会実装が、今後他のスタジアムやアリーナでも同様のサービス展開に繋がり、全国への「横展開」が実現できるようなロードマップを描いています。

文=松永裕司

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