サイエンス

2024.07.18 16:00

オオカミに襲われた「リスの反撃」をカメラがとらえる

リスを放り投げるハイイロオオカミ(Voyageurs Wolf ProjectのYouTube動画のスクリーショット)

一般に、オオカミがリスを襲うものだが、リスが噛みつき返すこともある。

野生動物を撮影するカメラが、狩猟の技術を試そうとする子オオカミが大きな挑戦を受ける様子をとらえていた。アメリカアカリスを捕食しようとしたそのオオカミは、リスの噛みつきがどれだけ痛いものなのか何度も思い知ることになった。めったに観察できない肉食動物の行動を垣間見れる興味深い映像となった。



ミネソタ州北部にあるボエジャーズ国立公園内と周辺のオオカミを対象とした研究をしているVoyageurs Wolf Project(ボエジャーズ・ウルフプロジェクト)は7月8日、「Squirrel bites wolf pup on the nose(リスが子オオカミの鼻に噛みつく)」というタイトルの動画を公開した。昨年の10月下旬、子オオカミが生後約7カ月の頃に撮影されたものだ。動画の開始直後に歩いているオオカミは子オオカミの母親だ。オオカミはクランベリーベイ・パックと呼ばれる群れに属している。

この動画は、ドラマチックな戦闘シーンの連続と子オオカミが獲物と対峙する様子を捉えている点で注目に値する。「カメラは私たちがオオカミを見たり、観察したりする唯一の手段です」とプロジェクトリーダーのトーマス・ゲーブルはいう「たまたまこのような場面をカメラがとらえていると本当にわくわくします。そのためには適切な場所に、適切な時間にセットしておかなければなりませんが、なかなかそうはできません」

オオカミにとって、リスはたまの「おやつ」だ。「オオカミの食生活にとってリスはごく小さな部分(1~2%以下)にすぎませんが、チャンスがあれば間違いなく捕らえて殺します」とゲーブルはいう。「しかし、オオカミがそのために大きな努力を払うことは決してありません。なぜならリスは彼らにとって小さな獲物だからです」 

ボエジャーズ・ウルフプロジェクトのチームを短時間見つめるハイイロオオカミ。この後森へと走り去った(Anthony Souffle/Star Tribune via Getty Images)

ボエジャーズ・ウルフプロジェクトのチームを短時間見つめるハイイロオオカミ。この後、森へと走り去った(Anthony Souffle/Star Tribune via Getty Images)

ボエジャーズ・ウルフプロジェクトは、ハイイロオオカミが夏の間にどうやって食べ、繁殖し、子育てをするのかを理解することに焦点を当てている。これは困難な作業だ。「ボエジャーズは深い森で、長年にわたって研究している私でも、オオカミがただオオカミらしくしているところを観察するチャンスはめったにありません。見つけることができないからです」とゲーブルはいう。プロジェクトが追跡しているオオカミたちは、ビーバーとシカの子どもをよく食べるが、これらの獲物は容易に捕食できるため、食事の証拠がほとんど残っていない。

プロジェクトチームはGPSトラッカーを使ってオオカミを追跡している。技術者は野外に出て殺された痕跡を探す。チームはオオカミの生息地のデータを集めて群れの移動も追跡する。「オオカミの捕食行動と繁殖生態の両方に関する詳しいデータを集めることで、夏季におけるオオカミの行動の重要な側面と、重要な生態学的な要因、被食者の個体数および人間との関わりとを結びつけることができます」とチームは説明資料で述べている。

カメラがとらえたのは戦いの一部だけだが、リスが奇跡的な生還をとげた可能性は低い。「オオカミがカメラに向けてリスを放り投げた後の映像はありません。それでも、この動画が撮影されたすぐ後にリスが子オオカミのお腹に収まったと考えてまず間違いないでしょう」とゲーブルはいう。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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