これはアジアの主要国が保有する米国債の総額だ。最も多いのは日本で1兆1500億ドル(約185兆円)、次いで中国の7700億ドル(約124兆円)となっている。バイデンの再選は絶望的との話も出ていて、政策当局者は莫大な国家資産が最悪の事態に見舞われないか戦々恐々としている。
共和党のドナルド・トランプ前大統領が11月の大統領選で勝利すれば、「トランプ2.0」政権がアジアに対して発動するであろう大がかりな貿易戦争は言うまでもない。トランプはかねて、米国が抱える難題はすべてアジアに原因があると決めつけてきた。大統領になる前、不動産業界の大物だった頃から、アジアは米国の雇用、所得、富を盗むことで繁栄してきたというのがトランプの持論だ。
トランプは今回の選挙戦でも、すべての中国製品に60%の関税をかけることや、中国の貿易上の「最恵国待遇」を取り消すことを予告している。輸入自動車には200%の関税を課すとも脅している。米国のすべての税金を外国製品への課税で置き換えるという主張までしたことがある。
言わずもがなだが、アジア各国の指導者のほとんどはバイデンの再選を望んでいた。だが、6月27日にトランプと対決した討論会はバイデンの認知力不安を際立たせ、形勢をひどく悪化させた。
世論調査ではバイデンへの逆風が強まり、トランプが再び大規模な貿易衝突を引き起こす恐怖のシナリオが俄然、現実味を増したように見える。
トランプが2期目に向けて掲げている狂気じみた計画を踏まえれば、最も慌てているのはドル建て資産を積み上げすぎている外貨準備当局者かもしれない。
実業家トランプが、少なくとも1990年代初め以降、繰りかえし破算を申請していることも思い出そう。トランプは2016年の選挙戦で、米国債のデフォルト(債務不履行)すらほのめかし、ウォール街をおびえさせた。