米国初のビリオネアである石油王ジョン・D・ロックフェラーが、フォーブスの創業者B・C・フォーブス自らがまとめた初回長者番付に登場したのは1918年のこと。当時のロックフェラーの個人資産は12億ドル、現在の約250億ドルに相当する。彼は37年に他界するまでに、現在の価値で約110億ドルを寄付し、残りを相続人に残した。相続人は200人以上に上り、純資産53億ドルのロックフェラー財団を通じて寄付をするという伝統を、今も守り続けている。今回のデカビリオネア一族の初回番付では、同一族は42位にランクインした。
今回、フォーブスは、新たに保有資産額100億ドル以上の富裕一族のランキングを発表することにした。市場規模の急拡大と資産価値の急上昇を背景にビリオネアの数が毎日のように増え続けるなか、ランクインしたのは45の多世代家族で、資産総額は1兆3,000億ドルに上る。ちなみに、前回の米国富裕一族ランキングを発表した2020年、保有資産額100億ドル以上の一族はわずか36だった。
今回ランクインした一族は全米の少なくとも23の州に住んでいるが、彼らの多くが集中している場所がある。上位3都市は、1位がニューヨーク・シティ(7家族)、2位はシカゴ(4家族)、3位がアトランタ(3家族)となっている。
1位 ウォルトン
純資産:2670億ドル資産の源泉:ウォルマート
家族構成:少なくとも39人
ウォルマートの共同創業者サム・ウォルトン(1992年没)と弟のバド(1995年没)の子孫である7人のビリオネアは、過去10年間で約220億ドルのウォルマート株を売却し、110億ドルを手放したが、現在も同社株式の推定45%を所有している。サムの長男のロブやその甥、義理の息子はウォルマートの取締役会のメンバー。バドの娘の夫スタン・クロエンケは7つの有名スポーツチームを所有する。
2位 マース
純資産:1170億ドル資産の源泉:菓子、ペットフード
家族構成:少なくとも37人
ジャクリーンとジョンのマースきょうだいは、兄のフォレスト・ ジュニア(2016年没)の4人の娘とともに、菓子とペットフードの大手マースを経営している。バージニア州マクリーンに本社を置く同社は、M&Ms、スニッカーズ、ペディグリードッグフードなど数十のブランドを有し、22年には470億ドルの売り上げを計上した。現在88歳のジョンは、一族でCEOを務めた最後の人物で、2001年に退任した。
3位 コーク
純資産:1160億ドル資産の源泉:コーク・インダストリーズ
家族構成:少なくとも19人
チャールズ・コーク(88)は、父フレッドが1967年に死去すると、石油精製、光ファイバーからペーパータオルまであらゆる分野を手がける売上高1250億ドル(2022年)のコングロマリット、コーク・インダストリーズを引き継いだ。チャールズと弟デイビッド(19年没)の妻ジュリアは、ともに42%の議決権を持っている。チャールズは、共和党の巨額献金者だが、トランプファンではない。
4位 カーギル・マクミラン
純資産:606億ドル資産の源泉:カーギル
家族構成:少なくとも100人
1865年にウィリアム・ウォレス・カーギルによって穀物倉庫会社として設立されたカーギルは、1770億ドル(売上高)の穀物メジャーで、コーンシロップ、でんぷん、家畜飼料を生産しており、食肉加工やエネルギー取引にも携わっている。ホイットニー・マクミラン(2020年没) は、1976年から95年までCEOを務めた最後のファミリーメンバーである。
5位 ジョンソン
純資産:448億ドル資産の源泉:フィデリティ・インベストメンツ
家族構成:少なくとも12人
創業者エドワード・C・ジョンソンII(1984年没)の孫娘アビゲイル・ジョンソンは、2014年に投資信託大手フィデリティ・インベストメンツのCEOに、2年後には会長に就任。彼女の下でフィデリティの資産は2兆ドルから4兆4000億ドルに膨れ上がり、サステナブル・ファンドを拡大し、ビットコインを取り入れた。彼女の父、エドワード・ジョンソンIII(22年没)は40年間同社を経営した。