創立100周年を迎える2037年までに売り上げ倍増計画を進めているNXグループ。日本通運のセールスは、顧客から課題を聞いて提案する従来型の営業から、潜在的な課題を発掘し解決する「プロアクティブソリューション営業」への進化を目指している。
情報やナレッジの全社共有を目的とした「セールスイネーブルメント部」を立ち上げてから1年がたった。Sansanやナレッジワークを用いて4000人以上の営業パーソンから2000を超えるナレッジを集積。これらを活用することで、新たに一人あたり月平均8.4時間もの顧客対応可能時間を捻出できた。
同部の立ち上げなど社内DXの旗振り役を担ってきた古江忠博は、さらなるセールス拡大の鍵は「End to Endでのサービス提供」だと話す。
「当社には鉄道輸送、航空輸送、倉庫・保管など計13の事業領域があります。現状では在庫の保管のみなどお取引の事業領域が部分的であるお客様に、材料の調達から消費者への製品のお届けまで一貫してお任せいただけるようになると、ソリューションの改善と売上増がかなうのです」
実際、顧客一社あたりに提供する事業領域数は右肩上がりだ。23年の売り上げを2021年比450%増と飛躍的に伸ばした例もある。
取引成果を支えたのは、同部が一年をかけて作成した「営業プレイブック」だ。
「若い人に『営業は寝技・立ち技・泣き落としだぞ』と言っても、伝わらない。そこで、顧客の購買意思決定プロセスに紐づけた各営業フェーズで、ハイパフォーマーたちが実践しているキーアクションをすべて言語化したのです」(古江)
共有されたノウハウは決してスマートな正攻法ばかりではなかった。例えば、商談後のフォロー段階では「会社の近くに寄ったことを口実にして訪問し、接触回数を増やす」「 即時レスポンスを心がけ、頼れる存在だと印象付ける」、なかには「案件が獲得できなかった場合の自身のダメージを伝えて情に訴える」という、涙ぐましく泥くさい「悪あがき」もあったのだ。
「すべてに再現性があるかは別問題ですが、やはりハイパフォーマーたちは簡単に諦めず、ジタバタしている。努力の仕方を具体的な言葉で共有したことで、各々で強化すべき点が明確になりました」(古江)
今年1月には部内に新チーム「ナレッジセンター」も設けた。専任の8人が、集約されたデータを美しくまとめたり、顧客とのアイスブレイクに活用できそうなニュースを社内へ拡散したりするほか、ツールについての社員からの質問を受け付けるなど「営業の駆け込み寺」となって細やかにサポート。利用率を底上げしてデータドリブンを加速させ、ソリューションの精度をさらに高めていく。
ふるえ・ただひろ◎NIPPON EXPRESSホールディングス専務執行役員 グローバル事業本部長。