海外

2024.07.08 08:00

レバノン出身の24歳が設立した「核融合スタートアップ」の野望

これらの2つのツールは、パルスパワー融合と呼ばれる技術を使用して放射線を機械に照射するもので、例えば衛星などが核攻撃を受けた場合の被害をシミュレートする。フューズは、このテクノロジーを将来の核融合炉に利用し、最終的には無限のエネルギーを宇宙探査に活用するという野望の柱にする計画だ。

「米国は2つの核保有国からの脅威に直面しています。私たちは、この脅威に対処するためのテクノロジーを速やかに開発すべきです」と、バタイチェは6月に開催された防衛テクノロジーのカンファレンス『Reindustrialize』の講演で語っていた。

バタイチェがダミデと出会ったのは、2020年の核融合技術に関するオンライン・カンファレンスでのことだ。ダミデは2013年にイランを離れ、マレーシアの複数の大学で核融合を学ぶために滞在した後、カナダに移住し、オンタリオ工科大学のポスドク研究員として働いていた。キャリアの大部分を学生たちと共に過ごしてきたダミデは、若く理想主義的な起業家であるバタイチェに惹かれたという。

「JCは、『君の生活から、他のすべてのことを取り除き、科学と技術に集中できるようにする』と言ってくれた。そんな彼のことを信じて、すぐにチームに加わった」とダミデは語った。

フューズのチームには、CIAの元アフガニスタン基地長であるローラ・トーマスなど、ペンタゴンやCIAから来た顧問や幹部が含まれており、政府との関係について助言している。

16歳でカナダに移住

レバノンで育ったバタイチェのこの分野への興味は、核物理学者だった父親に触発された。高校時代に彼は、核融合エネルギーを実現する夢がレバノンでは叶わないと悟り、16歳でカナダへの片道切符を購入し、モントリオールにいる兄の元に向かった(彼らは父親のおかげでカナダの市民権を持っている)。

モントリオールの高校に転入したバタイチェは、しばしば授業を抜け出してマギル大学の物理学の講義に出席していた。「私はそこで、核融合がすべての問題の中心にあることを知ったのです」と彼は語った。

彼は、高校の卒業を控えた2019年に、核融合の会社を立ち上げたいというファミリーオフィスを紹介され、その後、そのファミリーオフィスから250万ドル(約4億円)を調達し、最初の研究施設を立ち上げた。

現在、約30人の従業員を抱えるフューズは、カリフォルニア州サンレアンドロに新たな放射線試験施設を建設中で、エンジニアチームを拡大しようとしている。採用に向けた、バタイチェのメッセージは、防衛関連のハードウェア企業(その多くはカリフォルニア州エルセグンドに拠点を置く)に参加するマッチョで愛国的な若者たちに響くように進化している。

「当社が求めている人材は、官僚主義に背を向ける人たちだ。既存の枠にとらわれず新しい物事に挑戦する人を求めている」と、同社のウェブサイトには記載されている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事