経営・戦略

2024.07.06 10:00

人的ミスなどによるシステムダウン、損害は世界で「約65兆円」

「ダウンタイムの56%がセキュリティ問題によるものだということ自体は意外ではない。驚くべきは、人的ミスが依然として主な要因であることだ。より多くのプロセスを自動化することで、こうしたミスを減らし、セキュリティに対する全体的な姿勢を改善できる」とリーは話す。

AIと自動化の可能性

ダウンタイムと、それに伴うコストを減らすための解決策は、AIと自動化にあるのかもしれない。

スプランクのリポートによれば、レジリエンス面でのリーダー的企業、つまり、ダウンタイムからの回復が速い企業は、サイバーセキュリティツールやオブザーバビリティー(可観測性)ツールに多大な投資を行っている。また、レジリエンスリーダーは生成AIの導入にも積極的で、これらの技術を使って定型業務を自動化し、人的ミスを減らしている。

リーは、AIと自動化の可能性を楽観視している。「反復作業を自動化することで、人間の専門家は、より戦略的な課題に集中できる。これにより、効率性が向上するだけでなく、ミスも起こりにくくなる」

リーはまた、ダウンタイムが発生する前に脆弱性を見つけて対処する上でも、生成AIが助けになると強調している。

実際、自動化によって、一般的なセキュリティ脅威への対応を合理化することができる。例えば、自動化されたフィッシング対策システムは、すべてのユーザーの受信トレーから同時に、悪意あるメールを探して削除できるため、人的ミスのリスクを最小限に抑えることができる。

「セキュリティの多くの側面について、自動化する機会がある。顧客の多くは、こうしたツールの潜在能力に気付いていない」とリーは指摘する。

レジリエントな未来の構築

ダウンタイムとそれに伴うコストを最小限に抑えたい企業が進むべき道ははっきりしている。それは、自動化とAIに投資することだ。これらの技術は、セキュリティを強化するだけでなく、ビジネス全体の回復力を高めてくれる。リーによれば、ビジネス継続性、レジリエンス、サイバーセキュリティに投資している企業は、すべての指標でより良い結果を出しているという。

IDCヨーロッパのベンカトラマンは、「デジタルレジリエンスを高め、ダウンタイムから素早く立ち直るためのレシピは、セキュリティとオブザーバビリティーに関して統一されたアプローチを採用することだ」と述べている。

不必要なダウンタイムを防ぐ

リーとの会話で一貫していたテーマは、レジリエンスの鍵は、ただ単にインシデントを防ぐことではなく、インシデントが発生した時に、迅速かつ効果的に回復するための準備を整えておくことにある、ということだった。

ダウンタイムは、大きな金銭的損失と隠れたコストを伴う。しかし、ダウンタイムを防ぐために新しいツールを採用することは、チャンスでもある。AIと自動化を受け入れることで、企業は、人的ミスを軽減し、よりレジリエントな未来を築くことができるはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=米井香織/ガリレオ

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