瀬戸内エリア内外の起業家やアトツギをゲストに招き、瀬戸内・中四国特化型ベンチャーキャピタル「Setouchi Startups」の共同代表、藤田圭一郎と山田邦明がVC目線でゲストのビジネスストーリーを深掘りします。
今回は、失語者と家族の雑談を可能にしたいと研究を続け、独自の雑談創造デバイスの開発に挑戦するチット研究所の藤原咲歩さんをゲストに迎えた回をご紹介。
「失語症になった父親と、もう一度大好きな家族との会話をしたい」と願う高校生の研究開発の背景にある父親とのストーリーを語ることへの葛藤や、コンテストへ挑戦する中での気づきについてお届けします。
https://www.youtube.com/watch?v=fK4B93MJxJQ
雑談を作るという新たな支援機器 笑顔が生まれる瞬間を作りたい
藤原:チット研究所所長、高校2年生の藤原咲歩と申します。数年前父が失語症になり、家族内でコミュニケーションを取ることが難しい状況になりました。何か自分の力で助けられることがないのかを模索していき、その結果、雑談を想像する機器「チット」というプロダクトの開発に携わっています。
私は、父が失語症を持つ以前から家族の会話が大好きでした。しかし父が失語症になってしまい、父は伝えたいことがあってもなかなか自分の考えが伝えられなくなりました。家族での会話は、家族からのクローズドクエスチョンに対応していくコミュニケーションスタイルで、会話は必要最低限に。しかし、毎日する家族の会話だからこそ、楽しい会話、いわゆる雑談を作りたいと思うようになりました。
失語症には、重症者から健常者のうち中間地点に維持期と呼ばれる方が89%いらっしゃいます。しかし、今は支援機器はありません。そこを補っていく未来のツールが「チット」です。十人十色である障害の特性に合わせてカスタマイズし、本当に困っている人の心に刺さるようなプロダクトを開発していきたいと思います。
現在は失語症のみにフォーカスしていますが、失語症を超え、全ての方の雑談をサポートし、様々な笑顔が生まれる瞬間に携わっていきたいです。
「小さな憤り」が研究開発の活力に
藤田:「チット」の開発の始まりについて教えてください。藤原:「チット」を作り始めた時、ちょうど自分のイライラがすごく溜まっている時期でした。話せない人に対して話しかけている自分がおかしいなと思っていたり、話せない父に対してもなんで話せないんだと思ってしまったり、以前は会話ができていたのにとイライラを感じてしまったり。そんな思いがそのまま研究開発に向かいました。
山田:研究開発をすることで、そこが溶けていく感覚はありましたか?
藤原:ありました。自分がイライラを抱えていた本質は失語症について知らなかったことだと思ったんです。失語症について全く知らなくて、母からは何かきっかけがあったら話せるようになるかもしれないと伝えられていました。
知らないからイライラしていたのが、研究開発をすることによって失語症は脳が損傷してるから起きると知り、父のせいじゃないと思えるようになりました。もっと自分が今のような形で頑張ったら、何か喋れるきっかけが作れるかもしれない。また家族の中で笑い合える日が戻ってくるかもしれないとポジティブに考えられるようになりました。