エコシステム

2024.07.05 18:15

失語症になった父との夢 16歳起業家が未来型ツール「チット」開発する本当の理由

教えて瀬戸内VC どうして学生との接点を持つのか


藤原:私からお二人に聞きたいのは「どうして学生に関わりを持とうと思うのですか」ということです。

VCはもう起業した人たちに携わる立場だと思っているので、学生に関わるメリットはあまりないかもしれないと思うんです。学生とコミュニケーションを取っている時間があったら、自分のお仕事をされたり、やりたいことや家族との時間を過ごしたりすればいいと思うからこそ、どうしてなのかを聞きたいです。

藤田:「人生を豊かにするため」です。

起業家に接する時間との違いは、時間軸だと思っています。自分が人生を豊かにしていくことに、チャレンジしてる人や前向きな人との時間をどれだけ過ごせるかが直結していると考えています。未来に挑戦している可能性が極めて高い人との時間を今過ごすことは、長い時間軸で自分に対してリターンがあると思っています。

山田:「今この瞬間だから会ってもらえていると思ってるから」が答えです。

学生かどうかはあまり関係がなく、今楽しく喋れている人は波長やレベル感が合っている人だと思っています。それが学生だったら、今後少なくとも僕の年齢になった時には何倍もすごくなってると思う。そうなると、話してもらえなくなるんです。今だからこの人に話してもらえてるという風に感じて喋っています。

だから、本当に無駄とは考えていないし、熱量も一番あります。

藤田:最後に、藤原さんがどういう世界を実現したいかを教えてください。

藤原:物作りの力で麻痺と失語の壁を超える、そんな世界を作りたいと思っています。

理由は、まず原体験として父がいたからです。その原体験を踏まえて色々な方とお話しさせていただく中で、本当に困り続けている人でも放置されている人もたくさんいると知りました。やはり麻痺や失語症は例も多様で、そこを私だからこそできるアプローチの仕方で困ってる人達が笑顔になっていけるような世界を作っていくことに意味があると思っています。

物作りを考え続けながら研究もして、本当に困ってる人にぶっ刺さるプロダクトを作って、たくさんの人を笑顔にしていくような人になりたいです。



父親が失語症になったことをきっかけに、研究開発を始めた16歳の起業家。ストーリーや肩書きが持つ力は強く、本人の葛藤は大きかったに違いない。葛藤を武器に変え、今では父親だけではなく同じように悩む全ての当事者を向いて研究開発を進めている。思い描く未来の実現に向けて本質となるプロダクトと向き合い続ける姿は、事業を創り拡げていく全ての人の根元にある思いを思い出させてくれるのではないだろうか。

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文=西澤七海 編集=督あかり 写真=8bitNews

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