2. ペットを飼うことで、情動的手がかりに敏感になる
2019年の研究論文によれば、ペットを飼っている人は、飼っていない人に比べて、動物が苦痛を訴える声(猫の悲しい「ニャア」や、困惑した犬の「クゥン」)に敏感だ。鳴き声にこもったネガティブな感情や情動的意味を読み取れるのは、ペット飼育の経験を通じて深い共感能力が得られることの証左といえるだろう。この研究では、「安定型愛着スタイル」をもつ人ほど、苦痛を訴える猫の鳴き声に敏感であることもわかった。安定型の人は他者を信頼し、安定した人間関係を築く傾向にある。これは、必要なときには愛着対象がそばにいて、求めに応じ、手助けをしてくれると確信してこられたことが基盤になっている。これに対して、愛着スタイルが不安定な人は、捨てられることや拒絶されることを恐れ、他者を遠ざけようとする。
乳幼児に関する研究でも、これと似た結果が得られている。安定型愛着スタイルをもつ成人は、乳幼児の不安のシグナルから、その情動を正しく読み取る傾向にあった。つまり、安定型の人々は概して他者の情動に敏感に反応できると考えられる。感情の機微を理解することは、対人関係においても、動物との関係においても有用だ。
興味深いことに、ペットの飼育はより安定した愛着スタイルの確立にもつながり、他者との健全な関係の構築を助ける点が研究で明らかになっている。ペットは常に飼い主のそばにいて、飼い主を非難することがない。そのため、安定した愛着がどういうものかを人々が実感し、それを対人関係の中で再構築する助けになるのだろう。
ペットと飼い主の絆は、単なる「一緒にいること」を超えて、愛、共感、情動の共鳴について貴重な教訓を授けてくれる。ペットを気遣い、ペットに共感する中で、私たちは無意識のうちに、健全で安定した、思いやりに満ちた「人とのつながり」を築く能力を育んでいるのだ。
(forbes.com 原文)