オーダースーツに通じるユニフォームの原理原則
「僕にとってオーダーといえば、まず思い浮かぶのはスーツではなく、野球のユニフォームです。プロ野球選手が着用するユニフォームはすべてオーダーであり、各々の選手の好みに応じ、ミリ単位で各所のサイズをオーダーできるようになっています。どうオーダーするかは基本選手に任されていますが、そこには原理原則がある。一番大切なのは、オーダーがプレーにプラスとなることです。例えば数センチゆとりをとることで、脚が上げやすくなるというように。そしてもうひとつが、観ている方たちに不快感を与えないことです。観られることが仕事のプロ野球選手である以上、ユニフォーム姿がだらしなく見えてはいけない。美しく体に合った、選手を格好良く引き立てるユニフォームが理想でしょう。そしてそうしたユニフォームの原理原則は、オーダースーツにも当てはまると思うのです」ユニフォームについて、そしてオーダースーツについて、栗山英樹氏はこのように語り始めた。普段から栗山氏が愛用するイタリアのファッションブランド、ラルディーニが日本で開催する、スーツやジャケットの「メイド トゥ メジャー」特別受注会。そのオーダーをいち早く体験すべく、栗山氏は南青山の旗艦店を訪れた。そんな同氏が指摘する、オーダースーツにも当てはまる原理原則とはなんだろうか。
「長年ユニフォームを着てきた僕ら野球人は、ユニフォームに対する思い入れがあり、その有用性も熟知しています。そしてプロチームの監督を務め、野球日本代表も率いさせてもらったなかで年齢を重ね、ユニフォームという“考え方”がいかに素晴らしく、重要かが分かったのです。ユニフォームをきちんと着ていれば、人が人と対等に闘ううえで不可欠なプライドをもつこともできるし、相手へのリスペクトを表現することもできます。ユニフォーム姿が格好良く見えれば、自信にもつながるでしょう。だからこそ、現在はスーツが僕にとってのユニフォームととらえるようにしているのです。自分が気に入った、信頼の置けるブランドのスーツをきちんと着ていれば、誰に会っても失礼になることはなく、堂々としていられます。それが体に合ったオーダースーツならなおさらです。そして人と会ったり、人前に出る際は、真夏でも基本スーツにネクタイを締めるようにしています。クール・ビズの時代ではありますが、暑いからと野球の試合中にユニフォームを脱ぐことはありませんから。それが僕のスタイルなのです」
ユニフォームがもたらす自信や勇気が人を助ける
ユニフォームとはいわば、“何かと対峙するための服”といえる。その服が発揮すべきなのは、フィジカルな面をアシストし、パフォーマンスを引き出してくれる機能性だけではない。身につけることで誇りを抱かせ、メンタルな面の助けとなる。そして自信や勇気を与えてくれる存在が理想のユニフォームだろう。それは野球のユニフォームでも、ビジネスのユニフォーム、つまりスーツでも同じなのである。
「野球日本代表の監督に就任した際、さまざまな方とお会いする機会をいただきました。企業のトップの方も多かったのですが、昔から野球の監督は経営者から学ぶべきといわれており、これは千載一遇のチャンスと感じたのです。とはいえ、お相手は素晴らしい結果を出されてきた経営者ばかりであり、やはりプレッシャーを感じたのですが、このときは着ているスーツにとても助けられた思いでした。自分の体に合った、好きなブランドのスーツを着ると、“さあ、行くぞ”という気持ちになれ、どんな方とも正面を向いて堂々と対峙できたのです。
すると、お相手にも誠意が伝わり、とても有意義な会話ができました。フィフティ・フィフティの立場で対峙していただき、率直なお話や助言を聞かせてもらうことができたのです。あの時期に多くの方からお聞かせいただいたことは、僕にとって大きな財産となっています。人は人と向き合ったときが勝負であると僕は思っていますが、その際に着るスーツは、僕にとって欠かせないユニフォームなのです」
選手からスポーツキャスター、監督、そして現在のチーム編成及び運営の最高責任者と、さまざまな立場を経験してきた栗山氏。その都度、形は違えども“ユニフォーム”という服に助けられてきたという。そうした豊富な経験は、その時々の巧みなユニフォーム選びにも表れている。そしてそれは、栗山氏の真骨頂である類まれなリーダーシップにも通じているのだ。
リーダーにふさわしい自分に正直な人と服
「監督を務めていた時代、遠征中のホテル暮らしでは、僕がいると選手たちがリラックスできないので、夜に食堂は一度も利用しませんでした。昼食に利用するときは必ずシャツとスラックス、革靴を履いていたのですが、それはホテルで生活する以上必要な身だしなみであり、選手たちの手本となればと思ったからです。そのように、選手たちにしてほしい装いをまず自分でして見せる。それもまた僕のスタイルなのですが、監督時代のスーツにもそれは意識していました。当時は上質ながらもできる限りシンプルで、ベーシックなスーツを選んでいたのですが、それは心の本質的な部分で選手たちと接したいと思ったからです。派手な色やデザインで目立ったり、威圧感を与えるようなものではなく、ベーシックなものの方が自分らしさが出せるし、正直に自分を伝えられる。そしてそれが監督としての信頼感につながると思ったのです。そういった面から考えると、生地からボタン、デザインまで自分らしさが出せるラルディーニのようなオーダースーツは、人の上に立つ人間にとってベストな選択ともいえるでしょう」
自己表現としてのファッションならば、演出や誇張は当たり前である。だが、ことユニフォームにとって、それはときに自身のメンタルを覆い隠し、周囲に誤った虚像を伝えかねない。それは人の上に立つリーダーにとっては、致命的なミスともいえる。栗山氏が語るリーダーシップも、それを証明しているのである。
「リーダーにとって大切なことはたくさんありますが、まずは部下の前では正直でいることが重要なのではないかと、僕は思っています。往々にして部下の目は、上司の目よりも正しく、物事をしっかりと見据えているものです。そんな部下からリーダーは信頼されることが大事ですが、そのためには少しでも違和感を抱かれてはいけない。だから僕はなんにしても、できないものはできない、分からないことは分からないと、正直に部下へ伝えるように心がけています。できると期待させるだけだったり、分かったふりをしたりするのが、最も部下からの信頼を失うからです。絶対に嘘はつかず、常に正直でいること。それがリーダーにとっては第一条件であり、そこから人を信じること、つまり信頼関係が始まるのです。また、それは服にも同じことがいえると思います。人の上に立つ人間は、服も含めすべての面で部下から憧れられる存在であることは大切です。ですが、それよりも大事なのは、自分がどういう服を着たいか、どんな格好をしたいかを素直に表現することだと思うのです。もちろん正しい着方やルールは勉強するし、意識もしますが、そのうえで着る、自分が着たい服は、自分らしさを最も体現し、自分を正直に伝えられる服であり、ずっと着続けられる服なのです」
生地からボタン、裏地、そしてディテールからフォルム、着心地に至るまで、自分を投影させた、「メイド トゥ メジャー」で仕立てるラルディーニのオーダースーツ。それは体の隅々までフィットする未体験の着心地と、袖を通すたびに湧き上がる自信、そして自分らしさを余すことなく表現してくれる、唯一無二の勝負服となるに違いない。
【お問い合わせ先】
ラルディーニ 青山店
住所:〒107-0062 東京都港区南青山5丁目2-12 Gビル南青山03
TEL:03-6805-0837
営業時間:11:00~20:00
ラルディーニ
https://lardini.jp/
栗山英樹
くりやまひでき/1961年東京都生まれ。小学校から野球を始め、84年ドラフト外でヤクルトスワローズへ入団。89年にゴールデングラブ賞を獲得するも、メニエール病により90年で現役を引退。その後はスポーツキャスターや白鷗大学教授を歴任し、2012年に北海道日本ハムファイターズの監督に就任。10年間指揮を執り、パ・リーグ優勝2回、16年には日本一にも輝く。22年より野球日本代表の監督を務め、翌年のワールド・ベースボール・クラシックにて優勝に導いた。24年よりファイターズのチーム編成及び運営の最高責任者であるチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)を務めている。



