サイエンス

2024.07.05 18:30

サメ以上に危険な海洋生物「ハコクラゲ」について知っておくべきこと

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海を訪れる人たちを最も怯えさせている生物といえば、おそらくサメだ。しかし、数を見てみると、サメに襲われて死ぬ人はごくわずかだ。

フロリダ大学の研究者らが収集したサメによる攻撃のデータベース、International Shark Attack Fileによると、報告された死亡例はわずか141件だ。サメの中で最も恐れられているホホジロザメが死亡例の59件に関わっており、ヨシキリザメとイタチザメがそれぞれ2位と3位となる。

重要なのは、これが1年や10年の間に起きたものではないということだ。データベースは1500年代に遡って、わかっているサメの攻撃をすべて含んでいる。つまり、サメに襲われて死ぬ確率は、2億分の1以下になると研究者らは推測している。

では、海で最も生命に危険をもたらす動物は何だろうか? それはハコクラゲ(学名:Cubozoa)だ。ハコクラゲは年間40~100人の命を奪っていると推定されているが、多くの科学者が、実際のところその数はさらに多いだろうと考えている。

1. ハコクラゲとは何か?

ハコクラゲは棘のある長い触手をもつ半透明な海洋説物(Getty Imagtes)

ハコクラゲは棘のある長い触手をもつ半透明な海洋生物だ(Getty Imagtes)

独特な箱型の傘を持つことから名付けられたハコクラゲは、約50の種からなる箱虫綱に属している。強力な毒で知られているが、毒の種類は種によって異なり、人間に無害なものもあれば、数分間で死に至らしめるものもある。

ハコクラゲの中でも最も危険なのがハブクラゲ属で、オーストラリアウンバチクラゲ(学名:Chironex fleckeri)がその1つだ。極めて毒性の強いハブクラゲ属は、主にオーストラリア北部からインド太平洋地域にかけての沿岸海域に生息している。

ハコクラゲの傘は直径30cmに達し、それぞれの角から伸びる15本の触手は長さ3mにもなる。触手には数千個の銛(もり)のような刺胞(しほう)が並んでおり、獲物あるいは運の悪い人間と接触した際に毒を注入する。

その毒に心臓、神経系および皮膚細胞を急激に攻撃する能力があることから、ハコクラゲとの遭遇は人間に深刻なリスクをもたらす。刺されると強い痛みを感じ、迅速な治療を受けなければ心不全を引き起こし数分以内に死亡することもある。透きとおった外観と一見すると繊細な性質にも関わらず、ハコクラゲは恐ろしい海の捕食者であり、毒のある触手を使って魚や甲殻類を捕らえる。熱帯および亜熱帯の水域におけるハコクラゲは、危険を冒して彼らの居住地に踏み入る海水浴客やサーファー、ダイバーらに警戒されている。
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翻訳=高橋信夫

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