2. ハコクラゲはどこにいるのか?
ハコクラゲは熱帯および亜熱帯の水域、中でもオーストラリア、東南アジアおよび太平洋諸島の海岸でよく見られる。ハコクラゲが生息していることがわかっている具体的な場所には、オーストラリアのグレートバリアリーフおよび北部海域がある。浅瀬や河口を好むが、沖合で見つかることもある。オーストラリア以外にはタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどの水域でも見られる。ハコクラゲの分布は水温、塩分濃度、風および餌の有無に影響される。その強力な毒と死に至る刺胞(毒針)のために、それらの地域でウォーターアクティビティを楽しむ人たちにとって、予防措置は不可欠だ。
3. ハコクラゲの致死力が高い理由
ハコクラゲが最も危険な海洋生物に挙げられるのは、強力な毒とその効果的な注入システムのためだ。長年におよぶ研究にも関わらず、ゲノム研究によって150種類以上の潜在的な毒素を含むとされるハコクラゲの複雑な毒を、科学者はいまだに完全に解明できていない。これまでの研究で、毒の中には、血球を破壊するポーリン、筋神経系を妨害するイオンチャネルブロッカーおよび心臓細胞に働きかけて心不全の原因となるカルディオトキシン(心臓毒)が含まれていることがわかっている。毒は、触手に沿って密に並んでいる刺胞と呼ばれる微細な銛状の構造を通じて注入される。こうしてハコクラゲは迅速かつ効率的に獲物を麻痺させたり脅威から身を守ることができる。
ハコクラゲは有毒兵器を装備しているだけでなく、驚くべきスピードがあり、水中を最高時速8kmで泳ぐことができる。釣り鐘型の体と多数の触手によって、ハコクラゲは効率的なハンターとして、獲物を迅速に捕え制圧する。その半透明あるいは透明な姿は発見を困難にしている。