「価値創造が、コネのあるMBAからイノベーターへとシフトするにつれて、富の創造もシフトする......〔中略〕......Forbesの長者番付、あるいはそれに相当する未来の番付には、ビジネスパーソンが大幅に減り、逆にクリエイターが増えるだろう」
アレクシス・オハニアン(41)は2013年に出版した自著『Without Their Permission(許可を待たずに)』(未邦訳)のなかで、そう予見している。インターネットという開かれた空間により、誰もが従来よりも容易に起業から資金調達、マーケティング、販売までできるようになるというものだ。
それから10年超、世界は多くの起業家の台頭を目の当たりにしている。MrBeastことジミー・ドナルドソンのように、YouTubeでの活動を起点に推定5400万ドルも稼ぐクリエイターも出現。起業家を含む「クリエイター(創造者)」たちが、Forbesのビリオネアリストに名を連ねるようになっている。オハニアンはなぜ、この潮流に気づいたのか。彼は“予言”についてForbes JAPANにこう話す。
「人々がインターネットで赤の他人から情報を得たり、楽しんでいたりしたんだ。ソーシャルメディアでも同じだった。MrBeastに出会ったのもその頃だよ」
現在はベンチャー投資家(VC)として活動するオハニアンだが、米ソーシャルメディア「Reddit(レディット)」の共同創業者というほうがピンとくる人もいるかもしれない。05年創業のレディットは、24年3月に米ニューヨーク証券取引所(NYSE)へ上場を果たした。米名門アクセラレータ「Yコンビネータ」の第1期生として立ち上げられてからじつに19年越しの悲願達成である。
投資家としても古巣のYコンビネータや、イニシャライズド・キャピタル、現在のSeven Seven Six (776)を通じて、民泊アプリ「Airbnb(エアービーアンドビー)」、食料品宅配アプリ「インスタカート」、暗号資産取引所「コインベース」などに出資。出資先の一人であるMrBeastは今や、YouTubeで約2億5600万人(24年5月現在)のチャンネル登録者数を誇り、ハンバーガーチェーンを展開するほどだ。チャットボットChatGPTや画像生成ツールDALL-Eのような生成AI(人工知能)を使うのが当たり前になる今後、こうしたクリエイターの数は膨れ上がる、とオハニアンは予測し、だからこそ“人間らしさ”が再評価されると語る。