「妻と僕が良い親であろうとする姿と、大切にしているキャリアとの間でバランスを取ろうともがく姿を見てほしいんだ。子供たちがそれを見て、自分も何かに挑戦したいという気持ちをもつようになってほしい。それが何であってもかまわない。多くの親の思いと同じように、世の荒波に立ち向かえるようになってくれれば、それでいい」(オハニアン)
彼は、父親になったことで大きく変わったと明かす。黒人に対する人種差別反対を訴える「ブラックライブズ・マター(BLM)」運動の再燃に刺激を受けて、黒人の取締役就任を条件にレディットの取締役を辞任したり、女子プロサッカーチームのオーナーに就任したりしている。そして前出の776の立ち上げである。
「ベンチャー投資をするテクノロジー企業」を謳う同社は、公式サイト上に投資先はもちろん、面談回数から出資先起業家への返答時間、協力した調査の数にいたるまで業務内容を細かく数値化し、公開している。彼は「説明責任の弾み車」を作りたいのだという。VC業界は総じて透明性が低い。VCとしての説明責任を果たし、経営者が「顔」を見せることで、起業家やLPからの信頼を獲得する──。それが、次の投資機会や、優秀な人材の獲得につながるのは言うまでもない。
とはいえ、起業と投資の世界である。うまくいかないこともあるだろう。それもまた人生。成功も失敗も含めて子供たちは見て、成長するのだ。
アレクシス・オハニアン◎投資会社「Seven Seven Six(776)」創業者。2005年にソーシャルメディア「Reddit(レディット)」を立ち上げたのち、投資家に転身。Yコンビネータのパートナー、イニシャライズド・キャピタルを経て現職。11年、12年と2年連続でフォーブスの30 UNDER 30に選出されており、インターネットの自由を守る活動をしていたことから「インターネットの市長」と評されたことも。
