経営・戦略

2024.07.16 13:30

これからのAI時代で成功するのは「顔」を見せるクリエイターと経営者だ

アレクシス・オハニアン

「今まで以上にコンテンツがAIで生成されるようになる世界では、ほかの“ノイズ(雑音)”とは一線を画し、一人の人間としての人格が見え、人々がフォローして話を聞いて学びたい、そう思える人がより大きな価値をもつようになるはずだ」
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それは経営者も同じだという。メタのマーク・ザッカーバーグCEO然り、テスラのイーロン・マスクCEO然り。CEOや創業者がメディアを介さずに、自身のソーシャルメディアで事業について発表をすることが増えている。時代は「経営者の顔>会社のロゴ」で、経営者の「顔」が見える会社ほど、認知度も信頼も高まる流れが生まれている。

「世界で最も勢いのある企業のCEOたちが顔を見せ、自ら発信している。それを見て育った若い世代がマネするのは自然な成り行きだ」(オハニアン)

透明性が高い会社と、そうでない会社。消費者や就職希望者、投資家がどちらを選ぶかは自明だ。
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オハニアン自身、「顔」が見える経営者の会社に惹かれて出資している。Anja Health(アンジャ・ヘルス)もその一つだ。同社は、出産直後に赤ちゃんの臍帯血や組織、胎盤の幹細胞を冷凍保存。細胞治療のために収集・保存している。これらはがん、心臓病、肝臓病、糖尿病などの疾病の治療法となる可能性がある。創業者のキャサリン・クロスはTikTokやインスタグラムで「顔」として自社を売り込み、フォロワーを増やしてきた。同社は、776やYコンビネータから累計490万ドルを調達している。

生成AIやAIエージェント(ユーザーを補助する自律型AI)により、いっそう多くの情報が私たちの暮らしのなかを飛び交うようになる。これらのツールはクリエイターの中流層を生み出すが、同時に“ノイズ”も増える。だからこそ、人工的ではない“人間らしさ”が価値をもつようになるのだ。

かわいい子には旅をさせよ

米投資データベースのCBインサイツに、「最もネットワークが広いエンゼル投資家」と評されたオハニアン。196cmの高身長も手伝ってか、見た目は迫力あるが、どこかとっつきやすい雰囲気をまとっている。それも幅広い人脈に寄与しているだろうが、常に世間よりも一歩先にいる理由はどこにあるのか? オハニアンは幼少時から今まで全米各地を転居し続けてきた、引っ越しにその一因を求めた。

「みんなが本当に欲しがっているものは何か、人が良い投資だと気づく前に見つけるにはどうすればいいか。より多くの視点を得るには、『エコーチェンバー(価値観の近い人々の間で特定の意見や思想が増幅する環境)』から抜け出すことが重要だと気づいたんだ」(オハニアン)

そして、もう一つ。今のオハニアンに新しい視点を与えているのが家族であり、子育てだ。17年に結婚したテニスの元世界ランキング1位、セリーナ・ウィリアムズとの間に2人の娘がいる。
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文=井関庸介 写真=グエリン・ブラスク

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