北米

2024.07.04 12:00

米国は「エネルギー自立」しているのか? 最近の大統領選討論から考える

米ジョージア州アトランタで開かれた大統領候補討論会に参加する現職のジョー・バイデン米大統領(右)と対立候補のドナルド・トランプ前大統領。2024年6月27日撮影(Justin Sullivan/Getty Images)

米国の「エネルギー自立」という考えは、最近の大統領候補討論会でも登場するなど、依然として注目の話題だ。多くの人がその意味を定義するのに苦労している一方で、誰もが自分なりの意見を持っているようだ。

一貫した用語の確立

エネルギー自立の定義の下では、以下の2つの主張はそれぞれ真実だと理解することが重要だ。

1. 現職のジョー・バイデン大統領の下で米国がエネルギー面で自立していないのであれば、ドナルド・トランプ前大統領の下でもエネルギー自立を果たしていなかった

2. トランプ前政権下で米国がエネルギー面で自立していたのであれば、バイデン政権下でエネルギー自給率は記録的な水準にまで高まった

トランプ前政権下でエネルギー自立し、バイデン政権下で自立を失うという筋書きはあり得ない。

ここで、概念について簡単に確認しておこう。同じ内容について話していることを明確にするために、定義を立てることは重要だ。

定義1 輸入ゼロ

エネルギー自立の考え方には、2つの方法がある。自立の定義の1つは、エネルギーを輸入しないということだ。それを真のエネルギー自立と見なす。これを「輸入ゼロの定義」と呼ぶ。

エネルギー市場は国際化しているため、筆者はこの定義が有用だとは思わない。米国はエネルギー資源の一部を輸入し、それを製品に転換して輸出している。米国は1950年以前に原油の輸入を開始し、以降毎年輸入し続けている。

この定義によれば、米国は少なくとも75年間、エネルギー面で自立していないことになる。この定義は、世界のエネルギー供給がいかに相互依存しているかを無視しており、この定義によるエネルギー自立は必要でも経済的に望ましいものでもないことが分かる。

したがって、「トランプ前大統領がエネルギー自立を果たした」という考え方は、輸入ゼロの定義の下では正しくない。トランプ前大統領の任期中、米国は原油と石油製品を日量平均930万バレル輸入していた。輸入ゼロの定義に従えば、上述の主張1が成立する:トランプ政権下でもバイデン政権下でも、米国はエネルギー面で自立していなかった。
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翻訳・編集=安藤清香

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