ウクライナ空軍は、国内に20カ所ほどある大規模な飛行場や数十カ所あるより規模の小さな飛行場、さらに各地の高速道路に設けられる代替滑走路も利用できる。運用している機材はどれも内蔵燃料で数百km以上の航続距離がある。数tの弾薬を積んだ状態でも1100kmは飛行できるSu-27を、前線から数百kmの航空基地に短時間でも駐機させる理由はない。
ただ、ロシア軍がウクライナ全土を攻撃できる弾道ミサイルや巡航ミサイルを保有している限り、作戦機を前線から遠ざけるだけではおそらく十分でない。ウクライナ軍の指揮官はさらに、航空機や搭乗員を移動させ続ける必要もある。
ウクライナ空軍の戦闘機旅団はもともと、保有機をロシア側に狙われにくくするために、予測しにくい運用をするようにしてきた。在欧・アフリカ米空軍のジェームズ・ヘッカー司令官の説明によると、ウクライナ軍のパイロットは「発進したのと同じ飛行場に着陸することはほとんどない」という。
駐機中の航空機に対するロシア側の攻撃が増えているため、ウクライナ側はこれまで以上に予測しづらい運用を迫られるに違いない。同時に、駐機中の機材を守る強化型シェルターを建設したり、おとり(デコイ)をもっと配置したりすることも求められる。イフナトは「空軍は、敵に対抗し、敵を欺くために、できることは何でもやっていく」とし、欺く手段の一例にモックアップ(実物大の模型)も挙げている。
ロシア側による容赦のない攻撃が続くなか、ウクライナ軍は保有機を守るために何をするにせよ、すぐに行動を起こす必要がある。ウクライナのジャーナリストで作家のイリヤ・ポノマレンコは、「組織的な怠慢はこの戦争でわたしたち全員を死に追いやりかねない」と警鐘を鳴らしている。
主権国家としてのウクライナを支持する人々にとってとくに苛立たしいのは、ウクライナとの国境に近いロシア側の基地でもロシア軍機が同じように、ウクライナ側が攻撃しやすい状態に置かれていることだ。だが、米国が課している制限のために、これらのロシア軍機は米国製兵器では攻撃できない場合がある。
(forbes.com 原文)