大学を卒業し、新社会人として働き始めた人も多いかもしれない。もしくは、すでに数年間のキャリアを積んでいたり、まだ学生だったり、誰かの親になっていたり? そんな多様な立場の人が存在する年齢でもある。
そんな様々な「23歳」をテーマに、フジテレビの動画配信サービス「FOD」は、新進気鋭の若手監督5人を迎えてオムニバスドラマ『I am...』を制作。それぞれのユニークな視点から23歳が表現された。
“Z世代”の中にも括られる今の「23歳」とは、どんな年齢なのか——。8月に「世界を変える」30歳未満「30 UNDER 30」を発表するForbes JAPAN編集部が、本作の監督を務めた鈴木健太、森岡龍とともに、その生き方を探った。
2人の監督はどんな23歳を描いた?
『I am...』は、23歳の主人公を軸に、コンセプト「誰でもない わたし。のお話」に基づいて、自分らしくあろうとする「私は、私」という姿を表現したオムニバスドラマ。監督は、渋江修平、鈴木健太、根本宗子、堀田英仁、森岡 龍の5人が務めた。テーマの「23歳」について「色々挑戦しているけれど、まだどこにもたどり着いていない。自分がやりたいことを追求するうえでの過渡期なのかな」と話す鈴木は、本作のテーマを聞いたときに、幅が広すぎて難しいと感じたという。
それは、人は年齢でくくれない部分があるから。「23歳ってこうだよね」と決めつけてしまうことはしたくない。そこで、企画を考えるにあたって23歳にヒアリングをして回った。すると色濃く出てきたのが、コロナ禍の影響だった。
「10代の終わりにコロナ禍に突入した世代なので、外に出たり新しいチャレンジをしたりといったことが、コロナのせいで叶わなかった。そのせいで、『もうきっと無理だ』みたいな終末感があるように感じました」
鈴木が監督した『終りの季節』では、2024年を生きる23歳を等身大に描いた。物語の中心となるのは、ユニットとして音楽活動をするトキとノア。23歳、トキは大学卒業を機に一般企業に就職するも、二足のわらじで活動するうちに「何が大切なのか」がわからなくなる。
「就職して人生を前に進めようとしているトキと、逆に就職なんてせずに大好きな音楽を続けたいというノア。ちょっとベタな設定なんですけど、そういう2人の物語を通して23歳の葛藤を描けないかなと思って制作しました」
『終りの季節』(C)フジテレビ
鈴木によると、トキは自分で人生選択をしているわけでなく“流れ”で生きていて、それがうまくいってしまっているタイプ。リアルな社会でも、そういった人は多いだろう。その結果、「本当に自分がやりたかったことって何だっけ」と悩んでしまう。本作では、そんな何も決められなかった人が、自分で動き出すまでの過程が描かれている。