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2024.07.19 15:15

「23歳」は、人生で最も悩める時期? │ドラマ「I am...」から考える

(左から)鈴木健太、森岡龍


渋江:私は、番組のタイトルの『I am...』からシンプルに「私は」と直訳し、23歳の自己紹介をテーマにしました。社会人になると完全アウェイでの自己紹介がやってきます。ネットで簡単に調べられる時代で、「これをやったらこうなりました」などと経験談が出ている。なにをやっても“想定内”だと悟られるのではと考え、「新垣蒼汰」という人物像を設定しました。

『新垣蒼汰』(C)フジテレビ
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根本
:あの頃のがむしゃらさみたいなものって今のわたしにはもうなくて。今はまた別のものとの戦いをしている日々なので。だから23歳のいろいろな職業の子たちに会わせてもらって話を聞いて、「ああ自分もこんな風に思っていたなあ〜!」とかあの頃の感情を思い出す時間をまずつくりました。

中でもテレビ局に勤めている女の子が自分とすごく重なる部分があって、彼女が「腐らず変えてやる!やりたいことやってやる!」と明日も出社して欲しいなって気持ちでつくりました。

——作品のこだわり、見どころは。
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根本:主演をお願いした柏木ひなたさんって、もうすごい人を前向きにさせるエネルギーの持ち主だなって昔から思っていて。そういう彼女に主演をやってもらえたことがとてもよかったです。他のキャストもそうなんですが、この作品の持っているエネルギーの色となるべく同じ色を持つように自分が感じている方々にお願いをしました。

あとわたしは演劇の人間で、映像に関しては流行りとかわからないことの方が多いので、演劇をつくっている自分だからつくれるものにしようと、あまり映像だということを気にせずつくりました。

23歳ってどんな世代?

『終りの季節』のなかでは、トキの母親がトキのことを「まだ23歳」と言ったり、「もう23歳」と言ったりする。

「現代は子どもと大人の線引きが昔よりあいまいになってきているのかもしれません。30歳になっても子どもっぽい人も当然いる。そうしたときに、親が23歳の子どもとどう向き合うか。そして、子どもは親からどう扱われるのがよいのか、という塩梅が難しいなと感じました」(鈴木)

こうした“子どもと大人の狭間”にいる年齢であることは、「瑣末なことで一喜一憂して落ち込んだり、他人と自分を比べて羨んだりした」という堀田や、「自信をちょうど潰された時期」と語る渋江、「わたしの場合23歳って周りも自分も見えないくらい無我夢中だったな」と振り返る根本のコメントにも見られた。

また森岡は、自身の若い頃に比べて「今の23歳は、テキトーに生きていくことが許されなくなっているのでは」と指摘する。

「13年前は、今と比べれば日本もまだ少しだけ豊かで、役者の道を志して“就職しない”という選択肢をとることにあまり怖さがなかったんです。ただ、今はコロナや物価高などの影響で、リスクを取れなくなっていますよね」

鈴木もこれには同意する。周りの23歳に話を聞いていくうちに、落ち着きや内向的な印象を受けたという。「しっかりしているというよりは、“ちゃんとしなきゃ”という意識が働きすぎている、取り繕っている人も多いかもしれないですね。逆に、そういう周りの圧にうんざりしている『ノア』のような子がいるのも事実で。結局未来を決めるべきなのは自分しかいない、っていう、そのメッセージだけがこのドラマを通して23歳に向けて明言できることなのかもしれない。」

「I am...」で描かれた5人の23歳から、いまの若者の姿、そして23歳だった監督たちの影が見えてくる。あなたはどのキャラクターに共感できるだろうか。


*『I am…』(全5話)は、FODにて全話配信中。

<監督>
渋江修平/鈴木健太/根本宗子/堀田英仁/森岡龍(五十音順)
<出演>
村田凪/神嶋里花/柏木ひなた/ロバートソン夏妃/石川瑠華
<スタッフ>
■企画・プロデュース
石井浩二(フジテレビ)/下川猛(フジテレビ)/稲垣護(ギークピクチュアズ)
■プロデューサー
鹿内植(フジテレビ)/中田晃生(ギークピクチュアズ)/枝靖隆(ギークピクチュアズ)/大野瑞樹(ギークピクチュアズ)/神西秀則(ギークピクチュアズ)/富木俊介(ギークピクチュアズ)
■制作著作
フジテレビ

文=田中友梨 写真=小田光二

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