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アジア

2024.07.03 10:00

公的資金投入の中国、不動産危機脱却の兆しは見えず

Alexander Khitrov / Shutterstock.com

中国経済の見通しは依然として暗い。一部の人々、特に当局は最近の景気刺激策、中でも住宅市場を下支えするための大規模な公的資金の投入がすぐに効果を発揮し、長引いている不動産危機から脱却し始めると期待していた。これらの策の効果はやがて出始めるだろうが、5月のデータや論評を見る限り、良いニュースはまだなく、おそらく当分目にすることはないだろう。

2021年以降、不動産は中国が抱える経済問題の震源地であり、政府の最新の景気刺激策はこの部門に集中している。愚かにも当局は不動産部門の問題を何年も無視してきたが、昨年末に注意を向け始めた。売れ残っている住宅が不動産価値に及ぼしている影響を取り除き、世帯の住宅購買の意欲を高めることを目的としたプログラムを進めた。

プログラムには中央銀行の中国人民銀行(PBOC)による金利引き下げも含まれているが、これまでのところPBOCの反応は鈍い。より大きな取り組みは、政府が長年にわたって定めてきた住宅ローンの最低金利を撤廃し、銀行が住宅購入者に一層融資するための特別条項を設けたことだ。中でも目玉は政府が約1兆元(約22兆円)の国債を発行して確保した資金による空き家買い取りだ。

今のところ、好転の兆しは見られない。住宅販売は減少し続けている。今年1~5月の販売件数は前年同期比30.5%減だった。新築住宅価格も下がり続けている。5月の主要都市の住宅不動産価格は前年同月を4.3%下回り、4月の前年同月比3.5%減から下げが加速した。

不動産価格の下落に歯止めがかからない状況で、ほとんどの国民の資産は不動産であるため、個人消費が依然として低迷しているのは当然のことだろう。5月の小売売上高は前年同月を3.7%上回り、4月の前同月比2.3%増から勢いを増したが、政府が目標としている実質成長率5%を大きく下回っている。同時に、中国の民間企業は事業拡大や近代化への投資、あるいはそのための雇用に非常に消極的だ。

製造業は経済の中で唯一活気づいている。5月の鉱工業生産は前年同月比5.6%増だった。だが、この唯一明るい話題でさえ、弱気な見方を楽観的なものに変えるほどではない。鉱工業生産の急増の多くは、新たなハイテク生産能力を創出しようとする政府の取り組みを反映したものだが、生産量はすでに国内需要を上回っているため、生産強化が図られた工場がどこに製品を販売するのかという疑問が生じている。米国も欧州連合(EU)も中国製の電気自動車(EV)に関税をかけ、中国との貿易に厳しい態度で臨んでいる。鉱工業生産でも減速の兆しがあり、5月は4月の前年同月比6.7%を大幅に下回った。

この明るいとは言い難い状況にさらに暗雲を投げかけているのが、外国から中国への投資が減少し続けていることだ。中国は長い間、技術力と経済活力を高めるために外国投資を頼りにしてきた。中国国家統計局によると、今年1~5月の対中直接投資額は4125億元(約9兆円)だった。前年の同時期の水準を30%ほど下回っている。さらに、最新のデータであるこの数字は1〜4月期よりも減少が加速しており、対中直接投資は12カ月連続で減少している。

中国政府の幹部が、不動産危機対策として最近実施された政策が効果を発揮するには時間がかかると上層部に伝えているのは間違いない。おそらく習近平国家主席をはじめとする指導部は効果が出ると信じたいはずだ。実際に効果につながるかもしれない。だが、これまでの数字からして、そのような待ち遠しい効果はまだ先の話だ。それまでの間、人々や経済界の苦境は続く。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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