たしかに、米インド太平洋軍は中国の違法な主張や虚偽のナラティブに対抗するために対ローフェア・プログラムを開発した(筆者はそれに助言した)。米国のいくつかの同盟国やパートナー国も同様のプログラムや手法を採用している。今回、国際的な報道機関が伝えた中国の学会の反応からは、こうした取り組みが、国際法秩序を支持する国々の結集で成功していることもうかがえる。
しかし、米インド太平洋軍のプログラムは優れたものだとはいえ、TikTokの世界的な影響力にはかなわない。敵対国によるローフェアに対抗するための政府全体の戦略がない限り、米国は、中国による差し迫った法的攻勢に対抗する手段や能力を十分に整えることができない。
中国は中央集権的な国家機構を通じて、国際法に関する虚偽のメッセージをAI(人工知能)並みのスピードでばらまくことができる。繰り返しになるが、米国は全体的な戦略がなければそれに効果的に対抗できない。米国の法律とそれを支える行政機構は、政府機関が国民にうそをつくのを防ぎ、国民のプライバシーと憲法修正第1条の自由を守るように設計されている。中国の誤った法的主張に対応するため、各政府機関がすみやかに連携できるようには設計されていないのだ。
中国のナラティブが支配的にならないように、米国は迅速に行動する必要がある。ローフェアの研究者であるオーデ・キトリーと筆者は米政府に、敵対国のローフェアに対抗するための戦略を策定するように働きかけ、その方法について具体的な提言もしている。