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経営・戦略

2024.07.09 15:30

「アート」と「サイエンス」の両軸で顧客体験価値を最大化する

(写真左から)片桐麻美、戸松正剛、矢三由佳理|NTTコミュニケーションズ

経営統合後、異なるスキルや文化をもつ営業組織をどのようにまとめ、強化するのか。日本を代表する通信会社が選んだのは、「アート」と「サイエンス」2軸の改革だった。


2022年、NTTコミュニケーションズはNTTドコモ、NTTコムウェアと経営統合した。それまで各社バラバラで提供していた法人事業をまとめ、統合ソリューションとして展開することで、顧客体験価値の最大化を狙う。統合後、従業員数は9300人に(※)。約半数が営業に従事する。「セールスイネーブルメントは“サイエンス”」。そう表現するのはマーケティング部門 部門長の戸松正剛だ。(※単体、2023年7月時点。)

同社では固定通信からIoTまで異なる商品知識や文化をもつ営業組織を束ねる共通言語を生み出し、営業品質を揃えるためセールスイネーブルメントに注力。国内最大級の約1万6000 IDのSaleforceなど顧客属性や商談情報の活用ほか、提案資料やTipsを格納したシステム、営業のネクストアクションをMicrosoft TEAMS上に表示するシステムなど、体系化に成功した。

「マーケティング技術が発達したとはいえ、営業が顧客接点で担う役割は大きい。営業担当は最大のメディアです。全員が顧客情報やナレッジを同じビューで見て、分析や営業に十分生かすことが重要です」。

一方で、戸松が “アート”と呼ぶ営業戦略の軸がもうひとつある。経営統合で広がったソリューションビジネスの認知と新規領域の拡大、顧客体験価値の向上を目的とした事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」だ。「オウンドメディア」と「コミュニティ」のほか、リアルとバーチャルを融合したビジネス創出の場「パーク」、約700名の専門家と事業を創造する「プログラム」の機能を提供する。「共創は通常商材のようにクロージングまで数カ月という目安もなく、紆余曲折あるのは当然。それでも中期で事業をつくるため、時間をかける価値があります」。同HUBはすでに1000件の共創案件をもつ。

「OPEN HUBを訪れる企業には明確な課題がないことも。そこで新技術に触れ、ワークショップで発想したりそれを伝えたりする過程で事業がよく生まれます」とは、法人マーケティング戦略を策定する片桐麻美。実際、2023年頭にできたフェムテック領域の企業コミュニティ「Value Add Femtech Community」の参加企業は、1年で12社から30社まで増加。水田のメタン削減とJ-クレジット創出に向け、同社とヤンマーグループで食関連事業を行うヤンマーマルシェとの共創プロジェクトなども生まれている。

OPEN HUBを運営するマーケティング部門の矢三由佳理は「マーケは営業への貢献が見えづらいですが、今回の受賞でやってきたことが正しかったとわかり励みになります」と語る。戸松は「私たちは裏方で演者は営業。彼らの活躍がうれしい」と言い、「数年後にBtoBマーケティングの日本のベストプラクティスになりたいですね」と目標を見据えた。


とまつ・せいごう◎ビジネスソリューション本部 事業推進部マーケティング部門 部門長、OPEN HUB for Smart World代表。(写真中央)

かたぎり・まみ◎ビジネスソリューション本部 事業推進部マーケティング部門 担当課長。(写真左)

やそ・ゆかり◎ビジネスソリューション本部 事業推進部マーケティング部門 担当課長。(写真右)

文=小谷紘友 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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