北米

2024.07.01 17:30

米最高裁、ホームレスの「野外での寝泊まり禁止」を容認

LOS ANGELES, CALIFORNIA - JUNE 28(Photo by Mario Tama/Getty Images)

米連邦最高裁は6月28日、オレゴン州の市が制定したホームレスが公共の場で寝泊まりすることを禁じる条例を支持する判断を下した。これにより、ホームレス問題への対応に苦慮する全米の各都市が、外で寝るホームレスに対して罰金やその他の罰を科すことが容認される。

オレゴン州グランツパス市の複数のホームレスの人々は、たとえシェルターが利用できない場合でも、屋外や車内で寝ることを禁止する市の条例が、アメリカ合衆国憲法修正第8条に違反する「残酷で異常な罰」に該当するとして、異議を申し立てていた。

しかし、最高裁は「公共の場所での野宿の禁止」が修正第8条に違反しないとの判断を下し、6対3の決定でこの禁止令を支持した。

最高裁のニール・ゴーサッチ判事は、グランツパス市の公共の場所での野宿の禁止令は、「限られた罰金や刑罰」を科すものであり、「残酷で異常ではない」と述べている。また、この禁止令はホームレスであること自体を犯罪化するものではなく、ホームレスの人々とバックパッカーや抗議活動のために野営する学生たちなどを区別していないと指摘した。

このケースは、ホームレス問題への対応に苦慮する全米の都市や州が注目しており、サンフランシスコやサンディエゴなどの都市は、裁判所に提出した意見書で、ホームレスの人々の権利と彼らの野外での宿泊が引き起こす公共の安全リスクとのバランスを取るよう求めていた。

この禁止令の反対派は、最高裁がこの条例を無効にすべきだと主張していた。政府はこのような禁止措置以外の方法で、ホームレス問題に対処すべきだと彼らは述べていた。

この禁止令に反対したリベラル派の判事のソニア・ソトマイヨールは、この条例が「社会で最も脆弱な人々に対し、不可能な選択を迫るものだ。すなわち、眠らずに起き続けるか、もしくは逮捕されるかだ」と書いていた。

グランツパス市相手取った訴訟に原告側として関与している弁護士は、「ホームレスに犯罪歴を与えれば、働き口や住む家を見つけてホームレスから抜け出すのが一層難しくなる」と述べていた。

米国のホームレス人口は、米国住宅都市開発省(HUD)の発表によると2023年1月時点で約65万3000人に及んでいた。これは同省が2007年に実態調査を開始して以来で最も多い人数で、2020年の約58万人から増加していた。

グランツパス市の公共の場所での野宿の禁止条例は、違反した場合に少なくとも295ドルの罰金を科すもので、複数回の違反により罰金が増加し、数千ドルを科される場合がある。また、最終的には市の公園から30日間追放される可能性がある。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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