世界で最も住みやすい都市
オーストリアの首都ウィーンは、文化の豊かさと必要不可欠な公共サービスの見事な融合が評価され、3年連続で「世界で最も住みやすい都市」の称号を獲得した。EIUのバーサリ・バッタチャリヤ産業担当副部長はフォーブスの取材に対し、ウィーンは今年も5つの項目のうち4つで100点満点を獲得したが、大きなスポーツ大会がなかったため、文化・環境だけが93.5点と、満点には届かなかったと説明した。
全体として、西欧の住みやすさは依然として高く評価され、上位20都市の中に8都市が入った。同じく3年連続で2位となったのは、デンマークの首都コペンハーゲンだ。スイスのチューリッヒは今年、オーストラリアのメルボルンを抜いて3位に返り咲いた。
世界の動向
今年のランキングでは、主に発展途上国の医療と教育が大幅に改善したことで、前向きな傾向が明らかになった。他方で、地政学的な脅威もランキング全体に影響を与えた。バッタチャリヤ副部長は、世界全体の住みやすさはこの1年でわずかに上昇したものの、金利の上昇などの経済的逆風を伴う高インフレにより、世界中で抗議行動が頻発しており、安定性に対する脅威は残っていると指摘した。全体として、発展途上国では住みやすさの水準が大幅に向上している一方で、先進国の都市は軒並み評価を落としていた。
米国で最も住みやすい都市
米国からは今年も世界の住みやすい都市上位20位に入った都市は1つもなかったが、米国内のみに限ると、ハワイ州の州都ホノルルが2年連続で首位に立った。ホノルルは世界の総合ランキングでは23位で、昨年の25位からわずかに浮上した。ホノルルは教育施設の充実が評価されたほか、米国の他の都市と比較して、安定性でも高い得点を得た。米国の目立った特徴としては、大都市より小都市の方が高く評価される傾向がある。70位のニューヨークや58位のロサンゼルスといった人口の多い都市は、文化的な面では高得点を得たものの、安定性や社会基盤の面では評価が低かった。
得点の低下は北米全体にわたって見られたが、特にカナダでは住宅が大きな理由となった。カナダ最大の都市トロントは昨年の9位から今年は12位へと順位を落とした。北米の得点が低迷した主な理由について、バッタチャリヤ副部長は、住宅供給が少ないためにカナダの社会基盤の評価が低下したことを挙げた。他の先進国と同様、カナダの住宅価格の上昇は、住宅ローンの金利が低かった新型コロナウイルス流行期に著しく加速した。同国では人口の増加と移民の流入により、空き家率は記録的な低水準となっている。
米国の都市は複数の構造的問題に直面しており、ランキングに影響した。その最たるものが、人種間の不平等に根ざした社会不安の増大だ。また、銃規制法が脆弱(ぜいじゃく)なため、犯罪が暴力的で殺人事件に至ることが多く、社会的な結束が失われやすい。