ネットフリックスの復活の原動力となったのは、パスワード共有の取り締まりと、より安価な広告付きプランの拡大である。本稿では、ネットフリックスの広告戦略がどのように上手く機能しているのかを見ていこう。
広告付きプランで、価格に敏感な顧客層も獲得
ネットフリックスは、広告付きプランの普及により、価格に敏感な顧客を獲得している。広告付きプランの月額料金は7ドル(訳注:日本では790円)と比較的安価で、顧客の心を掴んでいる。同プランを利用するユーザーは現在4000万人で、1月の約2300万人から増加している。ネットフリックスによると、広告付きプランが提供されている市場において、全契約者数に占める広告付きプランの割合は、前四半期で約40%に達したという。また、ネットフリックスは、広告付きプランのエンゲージメントを高めるため、いわゆる「イッキ見」をするユーザーに対し、過去3話を連続して視聴した後に広告なしで追加の1話を提供するなどの施策も検討している。加えて、広告付きプランで提供されるストリーミングの解像度は、広告なしのスタンダードプランと同じフルハイビジョン画質に引き上げられた。同社は広告技術への投資も増やしており、来年末までに自社製の広告プラットフォームを導入する計画を示している。そうなれば、現在広告配信に使われているマイクロソフトの技術に取って代わることになる。
それだけでなく、ネットフリックスは広告により適したコンテンツを探している。例えば、最近同社がスポーツ中継に力を入れているのは、広告ビジネスを成長させる必要性からくるものだと考えられる。ネットフリックスは、2024年のクリスマスにNFL(アメフト)の試合を2試合、その後2025年と2026年の両年に少なくとも1試合を放送する予定だ。加えて、WWE(プロレス)の生中継のほか、テニス、ゴルフ、ボクシングの放映権も持っている。加入者が広告付きプランと広告なしプランのどちらを利用しているかに関わらず、ネットフリックスがこれらのスポーツ中継で広告を流す可能性はあるだろう。
広告付きプランによる広告収入の増加分は、価格の安い広告プランを提供したことによる収入源を補って余りがあり、ユーザーあたりの収入は増えると予想される。参考までに、Emarketerによる調査では、広告付きプランを選択するユーザー1人当たりの広告収入は、2024年には70.50ドルに達すると予測されている。