経営・戦略

2024.07.09 13:30

栄養士も時短社員も活躍。全国の食堂を支えた「チーム営業」

(写真左から)石川達也・森田明・末廣久美子|エームサービス

(写真左から)石川達也・森田明・末廣久美子|エームサービス

人が集う場での食事の提供──給食事業は、新型コロナウイルスのパンデミックで最も大きな打撃を受けた業界のひとつだ。危機的状況下においても営業が成長できた秘訣とは?


オフィスで一息つくためのホットコーヒー。介護施設で暮らす高齢者も食べやすい和定食。子どもたちが楽しみにしている給食のカレーライス。スポーツスタジアムで手に汗握りながら飲む生ビール──。

1976年に三井物産の社員食堂運営から事業を開始したエームサービスは、現在、オフィスをはじめ、工場、病院、福祉施設、学校、スタジアム、ホテル、刑事施設まで、あらゆる領域で「食」を提供している。その総数はグループで1日約130万食にも上るが、自社のロゴを掲げて運営する施設はごくわずかであるため、その社名を知らぬままサービスに手を伸ばしている利用者も少なくない。ビッグスケールな「縁の下の力持ち」企業なのだ。

一方で、2万6000人を超える従業員の大半は全国約1500カ所で展開する事業拠点での実働部員であり、顧客の新規開拓を担う営業開発本部に所属するのは92人と、かなりの少数精鋭部隊である。主に企業や官公庁を対象とするBDS(ビジネスダイニングサービス)、病院や福祉施設を顧客とするHSS(ヘルスケアサポートサービス)、学校やホテル、スタジアムといった関連事業の3つに分かれて、日々全国を飛び回っている。

社歴36年の営業開発本部長・森田明は、入社時と現在の大きな違いの背景に「顧客の要望の多様化」を挙げる。

「私が入社したばかりのころは、新入社員は“先輩の背中を見て技を盗め”と教育される時代でした。しかし、全社の売り上げが当時の10倍以上へと成長し、お客様の要望も多様化している今の時代に、従来の“見て盗め”という営業人材の育成方法では効率が悪い。2021年に現職に着任したとき、すでに限界に達していると感じました。そのため営業を仕組みから変えて、会社の成長を支えていける安定した組織にすることが最初の課題だったのです」

だが、同時期にコロナ禍が重なり、大半の営業活動が停止に追い込まれた。
 
厳しい状況下、社内では業務改善についての議論が活発になった。営業戦略・企画担当だった石川達也らを中心とする若手メンバーが新たなSFA(営業支援システム)の導入を訴え、22年6月に、顧客、案件、行動、名刺などの情報を一元管理できる Mazrica Salesを採用。営業部員のログイン率のランキングを開示するなどしてデータの入力強化に尽力すると、具体的な改善の糸口が見えてきた。

「例えば、営業担当者は本来、お客様との契約“前”の段階に重点をおいて行動すべきなのですが、実際は現場の設備や運営オペレーションについての相談など、契約“後”のやり取りに多くの時間が割かれており、そのせいで新規開拓がペースダウンしていることが判明しました。そこで、各担当者がSFAに入力した顧客との面談内容をもとに、運営サイドとともにタスクの棚卸しを実施したのです」(石川)
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文=眞板響子 写真=吉澤健太

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