スポーツから映画まで、華やかすぎるポートフォリオ
2015年にエルドリッジを設立して以来、ベーリーは100社以上の企業を集め、総額100億ドルに相当する宝の山を築いてきた。その多くはエンターテインメント企業とスポーツ企業だ。例えばスポーツ賭博サイトのドラフトキングズ、年越し音楽特番の「ディック・クラークのニューイヤーズ・ロッキン・イブ」、ブルース・スプリングスティーンの楽曲の著作権、ホテルのザ・ビバリー・ヒルトン、フィンテック分野のユニコーン企業スタッシュ、MLBのロサンゼルス・ドジャースなどだ。
また、ブルーコーという別の事業体を通じ、22年にはロシアのオリガルヒ、ロマン・アブラモビッチから英プレミアリーグのチェルシーFCを買収。23年にはフランスのリーグ・アン、RCストラスブールも買収した。人種差別問題で窮地にあったゴールデングローブ賞を買収し、今年1月の授賞式を成功させた。フォーブスの試算によると、ベーリーの純資産額は61億ドルで、22年から16億ドル増えた。
ロサンゼルス・ドジャース
ベーリーはグッゲンハイム時代の2011年6月、ドジャースが破産を申請した際にこの球団に興味をもち始めた。ウォルターと一緒にスポーツチームでは過去最高額となる20億ドルで球団を買収。個人的に20%、エルドリッジを通じてさらに7%のもち分を手に入れた。2人はただちに球団に金を費やし、スター選手のエイドリアン・ゴンザレスやハンリー・ラミレスなどをトレードで獲得し、チーム強化を急いだ。
チェルシー
チェルシーは22年5月、ベーリー、グッゲンハイムのウォルター、スイス人のビリオネア、ハンスユルグ・ヴィース、そして未公開株投資会社のクリアレイク・キャピタル率いる集団にクラブが31億ドルで売却されることを発表した。13億ドルを投じて、エンソ・フェルナンデスやモイセス・カイセドといったスター選手を加入させて強化を行ったが、ドジャースの場合とは異なり、まだ成功にはつながっていない。
ブルース・スプリングスティーン
2021年12月、米ソニー・ミュージックグループが、ブルース・スプリングスティーンの楽曲の著作権を獲得したと報じられた。ソニー・ミュージックは、スプリングスティーンのすべての楽曲の原盤権と音楽出版権の購入にあたって、ベーリーのエルドリッジとパートナーを組んだ。取引額については明らかになっていないが、単独のアーティストによる取引では史上最大規模になると見られ、5億ドルを超えるとの見解も。
ゴールデングローブ賞
2021年、母体であるハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)の腐敗問題や投票権のある黒人会員の欠如に関する調査を受けると、ゴールデングローブ賞はハリウッドからボイコットされ、2022年は授賞式が放映されないという事態に陥った。ベーリーは21年にHFPAの暫定CEOになり、改革を主導して賞の知的財産権を営利目的の事業体に譲渡させた。23年6月にはペンスキー・メディアとともにゴールデングローブ賞を完全買収した。
トッド・ベーリー◎エルドリッジの共同創業者兼社長、最高経営責任者(CEO)。米バージニア州のウィリアム・アンド・メアリー大学では金融学を専攻。ニューヨークのクレディ・スイス・ファースト・ボストンから未公開株投資会社J・H・ホイットニーに移籍し、グッゲンハイム パートナーズへ。グッゲンハイムで社長まで務めた後、エルドリッジを創業した。