ドジャースが23年12月に大谷翔平と結んだ10年で7億ドルという大型契約は米国のプロスポーツ史上最大の規模だったが、そこにはドジャースをますますもうけさせる大きな仕掛けがあった。この契約の最初の10年間、大谷はわずか200万ドルの年俸を受け取り、残りは34〜43年にかけて毎年6800万ドルずつの後払いで受け取ることに同意したのだ。この契約の構造上、その年俸の現在価値は、MLBの割引率4.4%(後払い分を現在価値に換算するため)を適用すると“ たったの ”4600万ドルに過ぎない。ドジャースに優しいつくりなのだ。
「大谷は勝利を非常に重視しており、私たちも勝利を非常に重視しています。私たちの思いと彼の思いがきれいに合致したのです」(べーリー)
さらにドジャースは、山本由伸とも12年で3億2500万ドルの契約を締結。昨秋のワールドシリーズが史上最低視聴率を記録してしまった野球にとって活性剤となるはずだ。
22年、ベーリーはスポーツ界の宝石をもうひとつ自身の冠に加えた。英プレミアリーグのチェルシーFCは22年5月、ベーリー、ウォルター、スイス人のビリオネアであるハンスユルグ・ヴィース、未公開株投資会社のクリアレイク・キャピタルが率いる集団にクラブが31億ドルで売却されると発表した。
「プレミアリーグが放送されていないのは北朝鮮とロシアくらいではないでしょうか」(ベーリー)
ベーリーによれば、プレミアリーグの試合は米国時間では土曜の朝に行われるため、競合する放送がないのだという。
その後、13億ドル以上を費やしてチェルシーにスター選手を集めたが、今のところ成功にはつながっていない。
だが、ベーリーにはわかっている。ファンたちが試合に足を運んだり試合中継を視聴したりする限り、年金保険契約者である出資者たちへの支払いが行われ、自身の数十億ドルの資産も増え続けることが。