自己愛を理解することは、良いところも悪いところも含めて自分を受け入れること、そして、肯定的な自己イメージを維持することを意味する。
自己愛の意義は、単なる「個人的なウェルビーイング」を超えるものだ。つまり、自分を本当の意味で愛するとき、不当な扱いを受け入れにくくなり、他者との健全な境界線を確立し維持しようとする傾向が強まる。こうした均衡は、尊敬や信頼、真の愛情を促進する。
まずは自己愛を優先させ、それを他者へと広げていくべき理由は何なのだろうか。説得力のある3つのポイントを以下で紹介しよう。
1. 自己愛は、「自分らしさ」についての強い感覚を確立させる
自分を愛するとき、自分はどういう人間であるか、ということに関して、明確で強固な感覚を成長させることになる。こうした感覚は、自分の価値観、興味、長所短所を深く理解することを包含している。こうした「自分らしさ」についての強い感覚は、いくつかの理由から非常に重要だ。第一に、自己愛は、自分には価値があるという感覚を明確化することによって、自信を高める。内側から湧いてくるこうした自信は、「外からの評価」に対する必要性を減少させる。そして、パートナーの双方が自立し、共に成長できるような、バランスの取れた発展的関係を育む。
第二に、自己認識によって、他者との健全な境界線を確立し、維持することができるようになる。それによって、関係性における尊敬と理解が促進される。健全な境界線を確立することで、パートナーは、自分が大切にされ、耳を傾けられている、と感じることができる。
最後に、自分らしさについての強い感覚は、あなたの力を高め、決断に際して、外部からの圧力や期待から解放される方向で働く。自分の純粋な願望や価値観に共鳴するような決断ができるようになるのだ。これが本当の自分だ、という感覚は、関係性を強化するだけでなく、成長と満足感を互いの目標とするようなパートナーシップを確かなものにする。
「自分らしさ」についての強い感覚を持つためにはどうすべきだろうか?
・個人的な興味を探求する:
趣味や、一人での活動に時間を割き、何が本当に自分を刺激し、やる気を生むのかを発見しよう。手始めに、新しい場所へ一人旅に出かけてみよう。一人旅は、自分自身について理解を深め、一人で困難に立ち向かい、自信をつけるための強力な方法になる。
・パーパス(人生の目的)を明確にする:
自分の核となる価値観や目標をまとめたミッション・ステートメントを作成し、それを、意思決定や行動の指針にしよう。さらに、こうしたミッション・ステートメントは定期的に更新し、個人の成長や自己理解の進化を反映させよう。Frontiers in Psychologyに掲載された2019年の研究によると、「人生をつくる(life crafting)」というプログラムは、人生という旅に、構造化されたアプローチを提供する。価値観や情熱、能力、社会生活、キャリア願望、理想的な未来などを振り返りながら、具体的な目標を設定し、個人の成長と満足のための公約を設定することが含まれる。
2. 自己愛は、感情的な安定を促進する
「まず自分を愛すること」は、安定した恋愛関係につながる。つまり、心の隙間を埋めようとして恋愛関係に入るのではなく、感情的に安定したところから、恋愛関係に入ることができる。そうすることには、さまざまな利点がある。第一に、自分を愛することは、不安の軽減につながる。不安は、嫉妬や、見捨てられる恐怖の原因となるものだ。自分への安心感があれば、自信と信頼をもってパートナーに向かうことができ、そうした態度は調和につながる。
第二に、感情の基盤が安定していれば、恋愛関係を含めた人生の試練を乗り越えやすくなる。こうしたレジリエンスは、ストレスや逆境をより効果的に管理するのに役立つ。そして、人生における数々の試練のなかで、自分とパートナーの両方を支え、結び付きを強める。
第三に、自己愛と感情的なウェルビーイングを優先させるとき、建設的で冷静な対話ができるようになる。問題が生じた時に、感情的に反応するのではなく、直接的かつ思慮深く対処することもできるようになる。効果的なコミュニケーションは、対立を解消し、誤解の悪化を防ぐ。感情的に安定した関係で行われる会話は、解決に焦点を当てた生産的なものになり、相互理解とつながりを深めるものになるだろう。