齋藤:今は宮崎市に住所があるんですけど、実際の拠点はどこかとはあまり考えないようにしています。 「自分軸」の人生を歩み始めてから、今ここにいるところが自分の拠点だと思っています。この後、岩手県釜石市や北海道に行ったりもするんですけど、そこが自分の拠点になって、その中で自分で体調をコントロールし、その瞬間を生き切るということを僕は多拠点生活の心構えとして大事にしています。
──島田さんは今、和歌山県のみなべ町を拠点に一次産業のワーケーションの事業に取り組まれていますが、どんなことをしていますか。
島田:私が代表理事をしている一般社団法人日本ウェルビーイング推進協議会として、「一次産業ワーケーション」という言葉を作って商標登録しました。実はこの「一次産業ワーケーション」は事業ではなくて、一切お金が発生していない活動なんです。
活動拠点の和歌山県みなべ町は、世界農業遺産であり、日本一の梅の産地です。
私はずっとワーケーションという働き方を推奨してきてるので、みんなで梅の収穫をしましょうよ、ということで3年前から始めました。県外から興味のある人たちを地域に呼び込み、1日4時間から梅作業を一緒にやっています。 今年も5月から7月9日まで70日間やってるので、よかったらぜひ来てください。ウェルビーイングが確実に高まります。
──多様な多拠点生活の広がりから、今年6月には「2地域居住」を促進する改正法が成立し、国としても多拠点生活を後押ししていくような流れができていますが、佐別当さんはどのように感じられてますか。
佐別当:現実的な話をすると、コロナが明けてから、やっぱりリモートから出社へと回帰したんですよね。 それによってリモートワークをする人たちは一旦大きく減りました。私たちのサービスADDressも、ヘビーに使える人たちは減っていくだろうなと予測し、料金プランを変えました。
一方で、世界中を転々と移動しながら生活する人々は10年後には世界人口の11%ぐらいになると言われて、海外でも日本でもデジタルノマドのための制度は整っていき、世界的にみたらそういった人々は右肩上がりに引き続き増えていくと考えられています。
日本だけで見ると、そういうデジタルノマドみたいな人は今ちょっと減ってしまった状況で、国内ではライトな多拠点生活をする人たちが増えています。その動きを政府が止めるんじゃなくて、せめて2拠点生活はできるように推進しましょうというのが今回の流れです。
齋藤:多拠点ももちろん大事なんだけど、いわゆる「心の拠点」をどれぐらい持てるかっていうのが、 今日の1つのテーマであるウェルビーイングになるということを、よく島田さんから教えてもらっていますね。
島田:拠点の「拠」って、拠り所っていう意味ですから、そう思います。私は、多拠点生活じゃなきゃいけないってわけじゃないけど、人にはやっぱりやってみてと勧めたいですね。
どの人も自分の中には、いろんな自分がいて、いろんな心の状態があって、その中で、「ここ落ち着くな」や「ここ好きだな」っていうところがいくつもあってもいいと思うんです。