海外

2024.07.01 08:00

「ラボ付きコワーキングスペース」で急成長中のスイス新興企業

Shutterstock.com

成長の途上にある企業にとって、コワーキングスペースは使い勝手がいい。フレキシブルで、手頃な料金で利用できる。商業不動産の賃貸契約に縛られることもない。だが業種によっては、オフィススペース以外のものを必要とする場合もある。例えば、バイオテックや製薬の企業は、成功の礎となる最先端の研究を行うための専門的なラボを必要とすることが多い。

そこに目をつけたのがスイス企業のSuperlab Suisse(スーパーラボ・スイス)だ。同社は、成熟しつつあるバイオテック企業や製薬企業にオフィスとラボの両方を提供する、新しいタイプのコワーキングスペースの先駆者だ。2020年にスイス・ローザンヌに第一号となる施設を開設。そして同様のものをこのほどバーゼルにオープンさせ、来年には3カ所目をチューリッヒに展開する予定だ。

「高度なテクノロジーと設備のおかげで、最近では創薬は大人数のチームだけが手がけるものではなくなっている。膨大な数の中小のバイオテック企業や製薬企業が実験を行い、進歩させている」とスーパーラボ・スイスの創業者兼CEOのシー・ジャンは説明する。「規模にかかわらず、こうした分野の企業はラボを必要としているが、サイエンス企業の創業者やCEOにはラボの建設や運営などに伴う、込み入った作業に割く時間やエネルギーはない」

スーパーラボ・スイスはこのような作業を引き受け、入居してすぐに利用できるラボスペースを企業に提供する。最低契約期間は6カ月だ。同社はまた、ロジスティクスと調達を支える事業も展開しており、施設に入居する企業はスーパーラボ・スイスを通して業務に必要な追加の機器を入手することができる。入居企業が顧客や投資家に自社の仕事をアピールできる環境が整っている。「科学者たちが研究に集中するために必要な自由を提供することを意図している」とシーは言う。

同社の事業は欧州では珍しいモデルだ。おそらく世界最大のライフサイエンスの中心地である米ボストンでは、LabCentral(ラボセントラル)やBioLabs(バイオラボ)のような企業が似たようなアプローチを取っている。だが、欧州では世界最大級の製薬会社や巨大な産業を有しているにもかかわらず、このモデルはみられない。創業間もない欧州の企業は、出発点である大学が提供するラボスペースに依存していることが多い。レイターステージの企業は、自前の施設を建設するための資金を調達するのに投資家に頼るしかないが、そうした施設は成長に伴い、急速にニーズに合わなくなる可能性がある。

この点はスーパーラボ・スイスの施設に対する需要からも明らかだ。ローザンヌにある同社の施設のスペースはすでに全て埋まっており、バーゼルの新施設はオープン間もないにもかかわらず、3分の1が契約済みとなっている。こうしたことから、同社はすでに黒字だ。

シーによると、同社が取っているアプローチの大きな魅力の一つは、バイオテックや製薬業界の企業が、同じような分野のさまざまな企業と一緒に仕事をすることを楽しみにすることが多いことだ。「新しいタイプのコラボレーションを可能にしている」「当社の施設の雰囲気は刺激的だ」とシーは話す。
次ページ > 今後はスイス国外にも進出

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事