政治

2024.06.28 10:00

「命綱」だった中国に首を絞められるロシア 天然ガス交渉は中国の言いなりに

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)と会談する同国国営天然ガス企業ガスプロムのアレクセイ・ミレル最高経営責任者(CEO)。2017年8月3日撮影(Mikhail Svetlov/Getty Images)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)と会談する同国国営天然ガス企業ガスプロムのアレクセイ・ミレル最高経営責任者(CEO)。2017年8月3日撮影(Mikhail Svetlov/Getty Images)

2022年2月にウクライナに侵攻したロシアは西側諸国の制裁により、欧州の大半を含む国際市場とのつながりを失った。長年ロシア産の天然ガスや石油に依存してきたドイツをはじめとする国々は、ロシア依存の名残を断ち切ろうと大幅に方針を転換した。
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その隙間に割って入ったのが中国だった。かねてより天然資源の新たな供給元を模索していた中国は、ロシア産天然ガスを受け入れるため、ロシア中部シベリアからのパイプライン開発に即座に関心を示した。

だが最近では、少なくともロシアにとっては、その命綱はむしろ自国の首を絞める縄と化している。年間最大5000万立方メートルの天然ガスをロシアから中国へ輸送する能力を持つ「シベリアの力2」パイプラインを巡り、中国政府は極めて強気な姿勢を取っているからだ。

ロシア国内では多額の補助金により自国産ガスが低価格に抑えられているが、中国は現在、ロシアの国内価格まで値下げするようロシア側に要求している。中国はまた、十分な量の天然ガスを購入することをロシア側に約束していない。
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一方、ロシア国営天然ガス企業ガスプロムは大赤字に陥っている。昨年は69億ドル(約1兆1000億円)の損失を計上し、20年ぶりに年間損失を出した。同社のアレクセイ・ミレル最高経営責任者(CEO)は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が先月、中国・北京を訪問した際には同行しなかった。同CEOはこれまで、両国の会談では必ずと言っていいほど登場しており、今回の異例の欠席は中露の天然ガス交渉が難航している証なのかもしれない。

中国がロシアとの交渉でこうした攻めの姿勢を取っていることは、ウクライナ侵攻開始以降、両国間の力学が変化していることを物語っている。侵攻開始後、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」が爆破され、西欧諸国の多くがロシアからの天然資源の輸入を縮小または停止。ロシアと西欧の経済関係はほぼ完全に解消された。西側の販路を失ったロシアにとって、経済的利益をもたらすという点で、中国の重要性が増すこととなった。

だが、価格交渉において、中国が割引価格を得る機会を逃すことはまずない。中国がロシアに経済的な駆け引きを仕掛ける中、ロシア側には反撃するための切り札が残っていない。この交渉がどう転ぶかにかかわらず、中露関係は変わりつつある。先に、中国との間には「限界のない友好関係」があると主張していたプーチン大統領も、今やその変化に気付いている。簡単に言えば、中国は自国に不都合なことをしてまで、隣国のロシアを助けようとはしないということだ。同時に、ロシアの経済的孤立は深まるばかりで、それを解決するまでの期限がプーチン大統領に迫りつつある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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