欧州

2024.06.27 09:30

ロシア軍の「亀戦車」、生け捕りにされる 解剖で想像以上の粗雑なつくり露わに

2015年5月、ロシア南部ロストフ州で屋外に置かれた冷戦時代の古いT-62戦車(vaalaa / Shutterstock.com)

ロシア側の陣地とウクライナ側の陣地の中間地帯に埋設されている地雷を除去するのに必死になり、さらにその作業にあたる兵士をウクライナ軍の自爆型FPV(一人称視点)ドローン(無人機)から守る必要にも迫られていたロシア軍はこの春、新種の車両を生み出した。

地雷を地面からかき出して起爆させるローラーを車体の前方下部に取り付け、乗員らをFPVドローンから保護するため砲塔や車体を納屋のような即席の装甲で覆った、装甲強化型の戦車だ。

戦場に登場するやいなや、ウクライナ側はこの異形のDIY戦車を「亀戦車」などと呼び始めた。亀戦車は増殖し、ロシアがウクライナで拡大した戦争の1000kmにおよぶ戦線のあちこちに、おそらく何十両と出没するようになった。

亀戦車が初めて確認されてから2カ月以上たった現在も、ロシア軍は前線近くの作業場で亀戦車をせっせとつくり続けている。少なくとも1つの連隊は、亀戦車用のパーツのため一般のロシア人に寄付を募っている。

「わたしたちはとても喜んでいます」。ウクライナ南東部に派遣されているロシア軍第7戦車中隊第218連隊に所属するロシア兵は動画を通じて、突っ込んできたドローンを絡め取る鎖の調達で支援を受けた本国の市民に感謝のメッセージを伝えている。

動画からはこの兵士が楽観的な考え方をしていることがうかがえ、それは注目に値するが、現実に即したものではないかもしれない。第218連隊はウクライナ東部ドネツク州の南部にある2つの村落、スタロマイオルシケとウロジャイネをウクライナ側から奪い返すべく、損耗を重ねながら攻撃を続けてきた。

数カ月にわたる攻撃は多少の前進につながったものの、第218連隊と近傍の部隊は車両に数十両の損害を被った。それには亀戦車少なくとも1両も含まれる。T-72戦車を改造したこの亀戦車は複数のFPVドローンなどの攻撃を食らっている。

この損失は例外的なものではない。戦争でよく起こることだが、ウクライナ側は新たに出現した亀戦車にも適応した。米国からの支援再開で弾薬を補充できたウクライナ軍は、大砲やミサイルで、あるいは空中投下の擲弾(てきだん)で、さらには亀戦車が対処したはずだった当の地雷やFPVドローンでも、この改造車両に打撃を与えるようになった。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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