国内

2024.07.06 11:00

10年で変わったコト

米国が日本にとって最重要国であることは10年前も現在も、そして今後10年も変わることはない。対米貿易額は30兆円で14%のシェアを占めている。安全保障も米国なしには考えられない。だが、同時に過去、貿易摩擦、半導体戦争、金融摩擦では手痛い仕打ちに遭っている。かの国は、国益の前には同盟国といえども容赦はしない国家であることを忘れてはならない。
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中国は政治思想や人権への考え方が著しく異なり、面倒な領土領海問題も抱える。両国民のお互いへの感情も良くない。他方で、日本の対中貿易額は44兆円、シェア20%と米国をはるかに上回る。中国なしで日本経済は成り立たない。加えて、米中関係は最悪の状態にあり、日本が間に挟まれる事態が頻発。日本政府も企業も、狭いフェアウェイを探そうと必死である。こうした環境は当分続く。春秋戦国時代の小国の立場が現代の日本といえるだろうか。

両国と上手に折り合っていくためには、外交手腕だけでは無理だ。日本が経済力と技術力を格段に強化していくこと、そして自国の独立を保つための防衛力を増強していくことが待ったなしの課題である。

日本企業はかなり元気を取り戻していると感じている。これまでため込んだ資産を積極的な投資に注ぎ込み始めた。近時、大型の対外企業買収が相次ぎ、グローバルな成長を志向している。円安による製造業の国内回帰も朗報といって良いだろう。投資対象は研究開発や設備だけではない。人への投資も大切だ。ウチ、ソト、モノ、ヒトへの思い切った投資を継続したい。政府も補助金だけではなく、こうした民間の動きを支援するような税制改正や規制緩和を推進すべきである。
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それにつけても、である。政治であれ外交であれ経営であれ、10年前も現在も将来も、理念は変わらない。Liberté, Egalité, Fraternitéだ。いよいよパリ五輪も迫ってきた。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボードを兼務。

文=川村雄介

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