北米

2024.07.04 13:30

米大統領選挙のゆくえ

5月30日、ニューヨーク市マンハッタン地区の裁判所において、トランプ元大統領(以下、トランプ氏)の不倫の口止め料を弁護士費用に見せかけるために業務記録を改ざんしたという起訴内容について、34の項目すべてについて、陪審員が、有罪との評決を行った。これは、トランプ氏を批判する勢力は、トランプ氏の犯罪者の一面を証明する大きな一歩として、11月の大統領選への負の影響を期待している。
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一方、トランプ氏の熱狂的な支持者たちは、この裁判が政治的な魔女狩りであり正当性がない、というトランプ氏の主張をうのみにしていて、むしろ団結を強め、トランプ氏への寄付金も急増しているのだという。

今回は、有罪ということだけが決まり、量刑については7月11日に言い渡されることになっている。トランプ氏は控訴するだろうが、控訴審の判決が大統領選挙の前に出るか、保証はない。懲役刑もありえる重罪なので、もし収監された場合には、大統領選挙への影響は大きい。

ただし、合衆国憲法では、有罪判決を受けても、たとえ収監されても大統領選挙に立候補し、大統領に就任することを妨げる規定はないのだという。大統領に当選したとしても、アメリカの民主主義の正当性が大きく揺らぐことになり、国際政治でも指導力に陰りが出るかもしれない。
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陪審員裁判では、陪審員全員が合意しないと評決として成立しない。民主党支持者が多いマンハッタン地区で行われた裁判とはいえ、12人いる陪審員のなかには隠れトランプ氏支持者がいて、全員一致は難しいのではないか、と疑う向きもあった。その意味では、一般市民が賢明な判断を下した。

トランプ氏が抱える裁判は続く。2020年の大統領選挙のジョージア州の集計に介入しようとした裁判、2021年1月6日の連邦議会襲撃を教唆したとする裁判、などであるが、これらの裁判の結果が11月の選挙前に出るかどうかはわからない。選挙という民主主義の根幹をなす制度を破壊するような疑いをかけられていること自体、トランプ氏が民主主義の価値を軽視していることを表している。

米大統領選挙では、周知のように、結果は、全米での得票数で決まるのではなく、各州での選挙結果に基づいて割り当てられる「選挙人」の数の合計によってきめられる。大多数の州では、一票でも上回った候補者が、その州に割り当てられた選挙人すべてを獲得するように決められている。多くの州では、共和党支持者と民主党支持者にもともと大きな差があるため、選挙前から結果は予想がついている。一般的に、東部と西部の沿岸州では民主党支持が多く、内陸部では共和党支持者が多い。
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文=伊藤隆敏

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