(今回の評決前の)世論調査で、バイデン大統領は僅差でトランプ氏にリードを許しているとされている。今回の評決結果は、バイデン大統領の再選戦略にとって有利に働くものの、swing stateごとにどのような影響があるかは不明だ。
一方、再選戦略にとって不利に働いているのは、イスラエルによるガザ攻撃によって、ガザの人道状況が悪化、それに憤慨する若者がイスラエル支持を取り下げないバイデン政権にそっぽを向き始めたことだ。本コラムでも何回か取り上げた、有名大学におけるパレスチナ支持グループの抗議行動が、パレスチナ関係者以外(とくに伝統的な民主党支持者である黒人層)からも支持されていることは、バイデン大統領の再選戦略にとって、大きな懸念材料だ。
トランプ氏の裁判、パレスチナ支持の抗議行動など、これまでの大統領選挙にはない要因が今年の大統領選挙にとって重要となりそうだ。
伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D.取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著 に、『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。