ハッブルは、現在進行中のジャイロスコープ(姿勢制御装置)の問題に悩まされており、保護機構のセーフモードへの移行を何度も繰り返してきた。セーフモードで科学運用が中断される間に、地上の運用チームが問題の解決を試みることができる。ジャイロスコープは、ハッブルが観測のために正しい方向を向くのを支援する、極めて重要な部品の1つだ。老朽化が進むハッブルには、当初は6台のジャイロスコープが備わっていたが、現在動作するのは3台だけに減ってしまった。この3台のうちの1台は調子が悪いため、NASAは正しく動作するジャイロスコープ1台だけでハッブルを運用できるようにする計画を実行に移した。
今回のNGC 1546の画像は、お礼のメッセージのようでもあり、生存証明書のようなものでもある。NASAの解決策が有効なのがわかるわけだ。「この画像は、ハッブルが新しいポインティング(天体導入)モードに移行し、より一貫した科学運用を可能にしてから初めて収集した観測データの1つだ」と、NASAは説明している。「ハッブルがこの新しいモードで科学観測の大半を実施することで、宇宙の画期的な観測を継続できると、NASAのチームは期待している」。単一ジャイロによるポインティングモードに移行すれば、機能しているもう1つのジャイロを予備として温存できる。
NGC 1546には、顕著な特徴がいくつかあり、古い星と新しい星が混在している。銀河の中心が黄色がかっているのは、古い星が集まっていることを表している。明るい青色の点は、星形成領域を示している。左側をよく見ると、ハッブルに対して真横を向けた位置関係(エッジオン)にある別の銀河を見つけることができる。