新たな価値観や技術が次から次に押し寄せる2024年の職場環境を考えると、ワーキングパーソンがメンタルヘルスを保つためには、レジリエンス(精神的回復力、何が起こっても立ち直る能力)が不可欠だ。それは、未知の課題に挑戦しつつ、過去の克服体験に学び、失敗を恐れず、むしろ「失敗は成功のもと」と肯定的に捉えるメンタリティである。
視点を変えることで、人生が変わる
レジリエンスは誰でも養うことができるが、生まれつきレジリエンスの高い人もいる。例えば、多くのプロスポーツ選手は元来強靭な精神力を持ち、ストレスをほとんど感じず、変化にもすばやく順応できる。一方で、生まれつき指摘や批判に弱い人もいる。自伝『Looking Up』の著者で、Caterpillar(キャタピラー)財団の理事長を務めた私の友人、ミシェル・サリバンは低身長症(いわゆる小人症)で、日常生活に大きな困難を抱えていた。そんな彼女が私にこんな話をしてくれたことがある。「あなたにとって、知らない誰かがドアを開けてくれることは『親切な行為』でしょう。でも私にとっては、『必要な行為』です。自動ドアでない限り、私は自分ではドアを開けられません。私はいつも誰かに何かをお願いしないといけないのです。でもその現実を受け入れた時、人生が劇的に変わりました。それまで辛い障がいと捉えていたものが、視点を変えると『機会』になったのです。私は今、これを『ルッキング・アップ』哲学と呼んでいます。私はそうやって毎日を生きています」