大流行ならどんな対策に?
専門家たちは、鳥インフルのパンデミックが宣言された場合、感染拡大を抑えるために予防措置を講じる必要が出てくると指摘する。非営利の研究機関RTIインターナショナルの上級疫学者、ドナル・ビザンツィオはフォーブスの取材に、マスク着用やソーシャルディスタンス(対人距離の確保)といった措置をまず実施すべきだとの考えを示した。「ワクチン接種までの時間を稼ぐのに必要な介入措置」という位置づけだ。
コロンビア大のジャストマンは、目を保護するゴーグルといった新しい対策も有効かもしれないと話す。とくに、ウイルスに感染している可能性のある動物と日常的に接触する農場労働者には役立つかもしれないという。
米国で鳥インフルに感染した酪農家3人は全員、結膜炎や目の痛みなど、目に関連した症状を発症していたためだ。これは、ウイルスの付いた手で目に触れたり、目をこすったりすることで感染が広がる可能性があることを示唆する。ジャストマンは、フェレットの目に鳥インフルウイルスを曝露させると感染したというCDCによる最近の研究も引き合いに出している。哺乳類のフェレットは呼吸器官の構造がヒトと似ている。
一方、米テンプル大学のマチェイ・ボニ教授(疫学)は、鳥インフルのパンデミックが起こった場合の予防対策は新型コロナウイルスのパンデミック時とは違うものになるのではないかとの見方を示す。鳥インフルウイルスが変異してヒトの間で広がるようになった場合に、それがどのように振る舞うかは、専門家にもまだわかっていないからだ。ボニは「H5N1の致死率は(普通のヒトインフルの)10倍や20倍どころではなく1000倍だ」と警告する。
ワクチンの状況は
米食品医薬品局(FDA)に認可されている鳥インフルワクチンは、豪CSL傘下のセキーラスや、英グラクソ・スミスクライン傘下のバイオメディカル・コーポレーション・オブ・ケベックが開発したものなど複数ある。米政府はFDA認可の鳥インフルワクチンを備蓄しているものの、国民全員に接種できるほどの数はない。ただ、セキーラスは、鳥インフルのパンデミックが宣言された場合、半年以内に1億5000万人分のワクチンを用意できる見込みだと説明している。