キャリア・教育

2024.07.03 13:30

「社長=ゴール」ではない。22歳ココイチFC社長の志

諸沢莉乃|スカイスクレイパー 代表取締役

経営ができる優秀な人なら案外見つかるが、組織を元気にできる人となると、なかなかいるもんじゃない。しかも、22歳という年齢ならなおさらだ。

「カレーハウスCoCo壱番屋」など27店舗をフランチャイジーとして運営するスカイスクレイパー(群馬県太田市)の社長に就任した諸沢莉乃。その若さばかりに目が行くが、15歳から横浜市の店舗でアルバイトを始め、2021年には全国1200店以上ある「CoCo壱番屋」のなかで当時15名しかいなかった「スター」の称号を最年少で獲得した、接客のプロフェッショナルでもある。

もちろん、接客が優れているだけでは社長業は務まらない。だが、同社が大事にしている人間性、そして「意志あるものにはチャンスを」という成長を支援する姿勢を体現している点では、彼女の右に出る者はいない。何しろ前社長の西牧大輔(現・会長)から社長就任を打診された際、「冗談だと思いましたが、同時にワクワクして、迷わず『ハイ!』」と即答した度胸の持ち主だ。時に思いが強すぎて熱くなり、同僚から「『キモイ!』とたしなめられる(笑)」と言うが、その積極性と利他的な人柄を、西牧は「これから続く人たちのロールモデルになる」と確信したという。

外食産業における人材の採用・育成は深刻な経営課題であり、アルバイトとも年齢が近い諸沢の起用は、「現場で一緒に汗をかき、一緒に会社をつくっていく」という言葉通り、やる気や活気を組織にもたらすなど、課題解決にひとつの道筋を与える。社長就任は、いわば時代の要請でもあった。
 
今後、経営全般については西牧から徐々に委譲されるため、まずは各店舗を回りカレーをつくり続けながら、組織文化を広めていく。ただ、社長は彼女のゴールではない。あくまで「人の役に立つ」という夢の途上でしかないのだ。素直さが武器の新米社長は、飲食業界をエンパワーできるか。


もろさわ・りの◎2001年、秋田県生まれ。高校1年時からCoCo壱番屋緑区中山店でアルバイトを開始。23年にスカイスクレイパー次期社長に任命される。店長業務などマネジメントを学び、24年5月に社長就任。好きなココイチメニューは「豚しゃぶカレー+旨辛ニンニク+マヨネーズ」。

文=古賀寛明 撮影=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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