三菱地所のCVCであるBRICKS FUND TOKYOは、23年3月のシリーズB、24年5月のシリーズCでIVRyに出資した。同CVCの橋本雄太はなぜ投資したのか。
橋本:BRICKS FUND TOKYOは、成長産業の共創を目指すというコンセプトで2022年に設立したファンド。CVCは、本業とのシナジー創出を前提としたものが多いですが、我々は不動産に限らず、社会課題の解決や産業構造を大きく変えていくような領域に幅広く投資をしています。IVRyへの投資検討を始めた22年の夏ごろは、まだOpen AIが「Chat GPT」を一般公開する前のタイミングで、私もそこまでAIを意識してはいなかったのですが、奥西さんは当時から単なる電話の自動応答サービスではなくて、世の中のコミュニケーション全般をAIで自動化していく大きなビジョンを語っていた。その筋道も精緻に考えられていて、素直にすごいと思いました。
奥西:日本にある会社の99.7%は中小企業です。労働人口が減っていくなかで、ソフトウェアでどうやって生産性を上げていくかを考えたときに、みんなが使っているものから始めようと思い電話という切り口を選びました。そこでたまったデータを用いて、誰もがAIを活用できる世界にしていこうというコンセプトは最初からありましたね。
橋本:奥西さんは総合力がすごく高い起業家。エンジニア出身なので、テクノロジーを深く理解していることはもちろんですが、採用や組織のつくり方もうまいと感じます。
奥西:クックパッドの元CTOやGoogle米国本社で活躍していたAIエンジニアなど、いい人材に恵まれていますね。入社してくれた全員がIVRyのビジネスモデルとマーケットへの可能性を信じてくれている。サービス業で人間が担っていた業務のいく分かのパーセンテージをAIが代替していくことは間違いなくて、法人のAI対話の市場はすごく大きい。15兆円くらいのTAM(獲得可能な最大市場規模)があると思っています。
例えば、昨年にはリクルートと共同で、AIによる飲食店の電話予約自動化の実証実験を始めました。お客さんが電話で「明日の18時から3人で予約したい」と口頭で言ったら、AIが予約システムを見にいってくれて、「18時は空いてないけれども、17時半か18時半だったら空いてます。どうしますか」といったかたちで、自然な対話を通じて予約が取れる仕組みをすでに実装しています。