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2024.06.26 08:00

レコード大手3社が音楽生成AIのスタートアップを提訴、著作権侵害で

Getty Images

大手レコードレーベル3社が、音楽生成AIシステムを開発するスタートアップ2社を提訴した。3社は、これらのAIサービスがアーティストの楽曲を許可なくAIモデルの訓練に使用し、「著作権で保護された録音物の大量侵害」を行ったと主張している。

ソニーミュージックとユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)、ワーナーレコードの3社は、米国のSuno(スノ)とUdio(ウディオ)を連邦地裁に提訴し、両社が「レーベルの録音音源を大量にコピーし、自社のAIモデルに取り込んだ」と訴えた。

各レーベルは、スノが「自社のサービスの構築のために、著作権で保護された録音物をトレーニングデータにコピーした」と訴え、ウディオに対しても同様の主張をしている。

レーベル側はまた、スノのサービスが著作権を大規模に侵害することによって、「人間の音楽表現の説得力のある模倣」を作り出していると主張している。また、ウディオに対する訴訟でも同様の問題が指摘され、同社が「著作権所有者の権利を無視している」と指摘した。

この訴訟を管理している全米レコード協会(RIAA)は、これらのサービスが著作権で保護された録音物に侵害行為を行ったことを認める宣言や、このような侵害行為を禁止する差し止め命令、すでに発生した侵害行為に対する損害賠償を求めている。

スノCEOのマイキー・シュルマンは、フォーブスに宛てた声明の中で、同社のサービスがオリジナリティを重視するもので、「当社のテクノロジーは、既存のコンテンツを記憶し、再生するものではなく、まったく新しいアウトプットを生成するように設計されている」と主張した。彼は、レーベル側にこの点を説明しようとしたが、「レーベル側は、弁護士主導の古い戦略に逆戻りした」とシュルマンは述べている。

RIAAの会長兼CEOのミッチ・グレイザーは、音楽業界はAIを受け入れており、アーティストやソングライターが主導権を握る「人間の創造性を中心としたAIツール」の開発に協力しているが、スノやウディオのようなサービスは「アーティストの仕事をコピーし、承諾や報酬なしに自社の利益のために利用している」と主張している。

楽曲や歌詞、ボーカルを一度に生成

米国で音楽業界誌などを発行するビルボードは先週、レーベル各社が、楽曲や歌詞、ボーカルを一度に生成できる2つの音楽生成AIシステムに対する訴訟を検討していると報じていた。これらのサービスは、1つの要素に焦点を当てる他の生成AIサービスとは異なり、3つの要素を同時に生成できる点に特徴がある。

スノは2023年12月にサービスを開始し、5月に1億2500万ドル(約199億円)の資金調達を発表した。同社は、AIの訓練に何を使用したかを明らかにしておらず、レーベル側は、同社が「何をコピーしたかを明かすことを意図的に回避している」と主張している。

ウディオは昨年12月に設立され、今年から利用可能になったが、ビルボードによると、同社もデータセットの訓練に許可なく著作物を使用したかどうかについてコメントを控えたという。

今回の訴訟は、AI企業とクリエイターの間の争いの最新のものだ。ジョン・グリシャムなどの作家は、昨年9月に同様の問題についてOpenAIを提訴し、ChatGPTのトレーニングに彼らの著作物が無断で使用されたと非難した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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