帰国後はおもに保険業界のシステム畑でキャリアを積む。アクサ生命保険では業界で初めて営業職員にタブレットをもたせ、電子サインを導入した。現場からの抵抗は強かったが、1〜2年かけて定着。功績を評価され、CTO(チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー)に就任した。
男性が多いデジタルの世界でリーダーになる女性はまだ珍しい。自らロールモデルになる意識があったのかと尋ねると、不動は首を振る。
「ジェンダーは意識していません。それよりもチェンジエージェントでありたい。私はまだ見えない未来を見るのが好きだから」
ボルボのトップに就任すると、真っ先に肩書を廃止し、プロジェクトベースの組織体制を強化した。フラットで柔軟な働き方が実現したことで社員はモチベーションを高めているという。
ボルボは全世界で販売する車両のEV比率を2030年までに100%にする方針を掲げている。不動は「日本は遅れていて、まだ12%。加速させるために変革を続けます」と意気込む。チェンジエージェントの本領を発揮するのはこれからだ。
ふどう・なおみ◎北海道出身。1991年米メアリービル大学卒業後、現地テック企業へ入社。帰国後、2010年アクサ生命保険、18年マニュライフ生命保険を経て21年ボルボ・カー・ジャパン入社。D&CX部門をけん引。23年8月より現職。