アジア

2024.06.26 10:00

またも外れた中国指導部の目論見、生産増強で経済問題は深刻化するばかり

中国が注力している分野の1つであるソーラーパネルに目を向けると、生産超過の幅はもっと大きい。国内でのソーラーパネル設置は、昨年の50ギガワット(GW)から今年は90GWとなることが見込まれ、急増している。だが生産量の増加幅は設置をはるかに上回っており、今年の生産は150ギガワット超になりそうだ。中国が余るソーラーパネルをどこに売るつもりなのか、なぜ指導部は生産強化を指示する際に販売先を考えなかったのか、疑問に思うのはもっともだ。

これらの数字ほど直接的ではないものの、他の指標でも同じような状況が示されている。昨年、「新たな質の生産力」を推し進めようとしたとき、電気機器とEVへの投資が急増し、電気機器で40%、EVで25%増加した。いずれも製造分野の一般的な増加幅である5%増をはるかに上回った。

そうした投資の増加は正当なものでなかったことを発表するかのように、今年の投資額は減り、製造業全体への投資の増加幅よりもやや低調に推移している。だが、その前の大幅な投資は明らかに生産過剰をもたらした。それを直接示すデータはないにしても、製造業の粗利率の低下がその証拠だ。現在、粗利率は長期の平均を2ポイントほど下回っている。

中国の経済が急成長していた時代には、過剰生産の問題はわずか1、2年の需要増で改善された。あるいは、中国が世界の工場であったなら、過剰生産は短期間で消滅しただろう。だが中国経済は急成長しているわけでもなければ、世界の工場でもない。

そのため、生産能力の増強というこの失敗は今後しばらく尾を引き、現在抱えている別の経済問題をさらに深刻なものにするだろう。西側諸国や日本は、少なくともかつてと同程度に中国との貿易から距離を置くようになっているため、中国の需給の不均衡を解消するにはさらに時間がかかりそうだ。中国の指導部が国内の経済問題を悪化させたのは今回が初めてではない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事