新たな旅団の編成自体は、とくに注目すべき動きでもない。ロシアがウクライナに対する戦争を拡大してから2年4カ月の間に、ロシア軍もウクライナ軍も新たな連隊や旅団をいくつも編成してきた。専属の幕僚や支援部隊をもつ新たな旅団を組織すれば、戦闘で疲弊した旅団と丸ごと入れ替え、後者に休息や補充、再訓練の時間を与えることができる。
第150旅団に関して注目すべき点は、その装備だ。この新編旅団には、T-64戦車の改良型T-64BV 2017年モデルが配備されている。これは、戦争拡大から2年以上が経過し、ウクライナ軍の戦車がロシア軍の地雷や大砲、ドローン(無人機)で何百両と失われたあとでもなお、ウクライナが新たなT-64を生み出し続けていることを意味する。
戦争が3年目に入る見通しとなるなか、これはよい兆候だ。ウクライナ軍は、戦場で歩兵のタクシーのような役割を果たす歩兵戦闘車(IFV)や装甲兵員輸送車(APC)を十分な数入手するのに苦労している一方、少なくとも戦車は十分な数を保有している。
重量38t、乗員3人、ディーゼルエンジンのT-64は冷戦期の代表的な戦車のひとつで、数百mmの装甲、125mm滑腔砲、この主砲用の自動装填装置などを備える。ロシアとの国境からわずか40kmほどのウクライナ北東部ハルキウ市にあるマリシェウ工場で、1963年から1987年にかけて生産された。
1991年のソ連崩壊後、ウクライナにはソ連軍のT-64が数千両、一説によると少なくとも3000両残された。マリシェウ工場は後継のT-72戦車やT-80戦車とともに継続使用できるように、T-64を約1000両を改修している。第150旅団に配備されたものを含め、新たに改修されたT-64の供給が続いているのは、残りのT-64から充当されているからだと推測される。
2014年、ウクライナ南部のクリミア半島がロシア軍の侵攻を受けると、ウクライナ国防省は国内各地の広大な車両置き場で保管されていた古いT-64を回収し、修理させ始めた。クリミア侵攻と続くウクライナ東部ドンバス地方への侵攻で始まった戦争をロシアが2022年2月に拡大したあと、この回収・修理作業が大幅に加速されたのはほぼ確実だ。