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2024.06.27 13:00

ゴールドの今後は「戦争の有無」にかかっている

Getty Images

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「ゴールドバグ(gold bug:金の虫)」と呼ばれる金の熱狂的支持者たちは、「貴金属はもはや通貨ではない」という事実を受け入れられずにいる。しかも世の中には、それを各国が金の買いを増やしている理由として持ち出す手合いもいる。つまり、「各国政府は自国の紙幣が信用に値しないことを承知している。通貨が暴落したら基本に戻って、ポケットいっぱいに銀や金を持ち歩けばいい」という考え方だ。
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これは半ば正しい。しかし、「貴金属の再貨幣化」が現実に起こることはないだろう。

すべての通貨が金兌換性を持つとしたら、1オンスあたりの金価格は途方もない額になるだろう。未来のいつの日か、金が通貨を担保する金本位制の世界が復活する、というのは夢だ。だが、そんな日は来ない。ずっと以前から貴金属は紙幣に変換され、金は信用連鎖の一部でしかなかった。

ただし、この考え方には正しい点もある。各国政府が金を買いだめしているのは、確かに自国の紙幣があてにならないからだ。だが、信用が問題となるのは例外的な状況に限られ、それ以外の通常の状況では各国の通貨は完全に信用できる。この例外的な状況とは、戦争だ。
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金は戦時に向いている。第二次世界大戦のような戦時中に外国に支払いをする場合、自国の紙幣はある程度までしか役に立たない。とりわけ戦況がよくないとき、金は必要なものを買える唯一の通貨になる。

第二次大戦中に米軍がフィリピンから退却した際に、金を携える一方で、銀貨をカバロ湾に捨てたのは、それが理由だ。金は軍需品なのだ。

そんなわけで、市場チャート専門家からすると、現在の金価格が大暴騰の土台づくりをしているように見える点にはどことなく不安を覚える。金市場は、われわれが戦争へなだれこみつつあることを示唆しているのだろうか?

第三次世界大戦が起きれば、たしかに、金は天井知らずに高騰するだろう。

個人的には、権力者たちがそこまで愚かだとはさすがに信じがたい。しかし、遠方で紛争の足音は確かに聞こえているし、徴兵や兵役の要請もそこかしこで醜い頭をもたげている。

現在の金市場において、典型的な価格バブルの基盤が形成されつつあることは間違いない。その事実を無視することはできないし、無視すべきでもないだろう。

価格急騰の可能性に関する典型的な説明は、ハイパーインフレだ。確かにハイパーインフレが起きればそうなるだろうが、筆者としてはそれが起こるとは思えない(終わりのない祈祷さながらの「破滅の予言」が、ずっと続いている現状のなかでさえ)。ドルが暴落することはないだろうし、米国が南米型のインフレに陥ることもないだろう。そうなると、残るは「戦争か平和か」という2つのシナリオだ。

筆者は後者(平和)を支持するが、ちまたで聞こえてくる戦争をめぐる話に不安をかきたてられている点は認める。金相場が突然急騰に転じたとしても、それが確実性を示す先行指標ではなく、確率を示す先行指標であることを願おう。

いずれにしても、これは金を保有し相場に注視するもっともな理由となる。というのも、金の価格が武力脅威の増大とともに上昇するなら、相場はこの先に待ち受ける事態に対する事前警告になるからだ。

それはそれとして、資金の少なくとも2.5%を金に投資するのが良策であることに変わりはない。そして、かつて筆者が金を積み立て始めたときに知ったように、長い目でみればポートフォリオの分散投資効果を十二分に期待できる方法だ。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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